日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベーム石」の意味・わかりやすい解説
ベーム石
べーむせき
böhmite
アルミニウムの鉱石鉱物の一つ。AlOOH型水酸化アルミニウムの鉱物である。ダイアスポアと同質異像関係にあるため、区別する際にはγ(ガンマ)型AlOOHとすることもある。本鉱物は硬度3.5、ダイアスポアは硬度6.5~7であり、石墨とダイヤモンドの対に次いで、同質異像関係にある相で硬度の差の大きい対である。鱗鉄鉱(りんてっこう)とともにベーム石系を構成する。自形は非常にまれであるが、顕微鏡的なもの(顕微鏡で観察できる程度のサイズの結晶)が知られ、b軸方向に扁平(へんぺい)な中央部が膨らんだ板状を呈する。合成ではAl(NO3)3の溶液を数百気圧で320~360℃に加熱すると生成される。
産状は下記の6通り程度が認識されている。(1)ラテライト化によって生成されたボーキサイト鉱床の主成分鉱物、(2)熱水交代性の粘土鉱床中の少量成分、(3)霞石(かすみいし)閃長岩(せんちょうがん)質ペグマタイトの生成の最終期の産物として霞石などの分解産物、(4)コランダムを含む霞石片麻岩(へんまがん)の分解産物、(5)中央海嶺(かいれい)玄武岩の分解産物、(6)霞石玄武岩の分解産物、として生成されることが報告されている。
共存鉱物はボーキサイトではカオリナイト、ギブス石、ダイアスポア、針鉄鉱など、粘土鉱床ではカオリナイト、葉ろう石、コランダムなど、霞石閃長岩質ペグマタイトでは霞石、ギブス石、ソーダ沸石、方沸石など。同定は白色微粉状態のものでは低い硬度、また劈開(へきかい)面上の真珠光沢による。実際にはまず粉末を指につけて観察し、次にこれをこすると劈開面が多く出るので真珠光沢が出てくる。粉末はある程度の大きさがあり、純粋であればこれで見当がつく。命名は最初にこの鉱物を研究したドイツの地質学者ヨハネス・ベームJohannes Böhm(1857―1938)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]
ベーム石(データノート)
べーむせきでーたのーと
ベーム石
英名 böhmite
化学式 γ-AlOOH
少量成分 Fe,Mg,Ca。Ga2O3 0.05%という例がある
結晶系 斜方(直方)
硬度 3.5
比重 3.08
色 白、無
光沢 ガラス。劈開面上では真珠
条痕 白
劈開 一方向に完全
(「劈開」の項目を参照)