日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルガ・ドン運河」の意味・わかりやすい解説
ボルガ・ドン運河
ぼるがどんうんが
Волго‐Донской Судоходный Канал/Volgo-Donskoy Sudohodnïy Kanal
ロシア連邦南部にある内陸運河。カスピ海に注ぐボルガ川とアゾフ海に注ぐドン川は、ボルゴグラード付近で直線距離で約50キロメートルにまで近づくため、この両川を結んで開削された。延長101キロメートル。ボルガ川に臨むクラスノアルメイスクより9か所の閘門(こうもん)によって88メートル登ったのち、4個の閘門によって44メートル下り、ドン川に臨むカラチ・ナ・ドヌーで巨大な人造湖ツィムリャンスコエ貯水池に入る。1948年に起工し、1952年に完成した。運河の水は灌漑(かんがい)用水、発電用水としても用いられ、総発電容量は16万キロワットに達する。この運河の可能性と重要性は、この地方がトルコ領であった16世紀にすでに論じられており、ピョートル大帝がトルコを駆逐してロシアの版図をアゾフ海にまで拡大したときも計画された事実がある。この運河の完成によって、黒海・アゾフ海とカスピ海が結ばれ、さらにボルガ・バルト水路によって、北方のバルト海との間の小型船交通が可能となった。ロシアの内陸水路網のなかでも、経済的にきわめて重要な水路である。
[青木栄一]