塩化ビニリデンCH2=CCl2の重合体(ポリマー)。塩化ビニリデン樹脂ともいう。プラスチックフィルム、合成繊維によく用いられる。塩化ビニリデンはクロロエチレン(塩化ビニル)と構造がよく似ており、塩化ビニルから製造される。塩化ビニリデン75~90%に対し、塩化ビニル25~10%の割合で共重合させたものが、サランやクレハロンという商品名の合成繊維や包装用フィルムである。太めに押し出してつくった単繊維が美しい色彩のテント、日覆い、ビーチパラソルや防虫網、蚊帳(かや)などに多量に使われている。この繊維はしなやかで、しかもじょうぶで難燃性や耐候性に富んでいる。フィルムは気体や湿気をほとんど通さないし、また薬品などにも侵されないので食品包装用として家庭においても使用されている。とくに真空包装用または不活性ガス封入包装用フィルムとして好適である。生産量は6.4万トン(2002)である。ポリ塩化ビニルと同じく加熱焼却時のダイオキシンの副生が問題である。
[垣内 弘]
塩化ビニリデンをラジカル重合して得られる繊維成形性結晶性高分子。難燃性,耐薬品性,耐候性にすぐれ,防虫網,テント,自動車用シートなどに繊維,モノフィラメントとして用いられるほか,ガスバリヤー性(気体を透過させない性質)が最も高い高分子であるため,食品包装用フィルムや家庭でのラップフィルム(商品名〈サランラップ〉〈クレラップ〉など)として身近に用いられている。塩化ビニリデンは塩化ビニルから合成される。
純粋のポリ塩化ビニリデンは固く,加工しにくいため,10%前後の塩化ビニルやアクリロニトリルが共重合される。成形性をよくするため,成形時に安定剤や可塑剤を加え,押出成形や射出成形される。物性を表に示した。
執筆者:森川 正信
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…ドライクリーニング用のトリクロロエチレンで膨潤を起こすので,これの使用は避ける。
[ポリ塩化ビニリデン系]
1940年にアメリカのダウ・ケミカル社でサランSaran(商標)として工業化された古い合成繊維。クレハロンKurehalon(商標)もこれに属する。…
…塩化ビニリデンCH2=CCl2は1840年に発見された沸点32℃の無色の液体で,古くからよく重合することで知られていた。1940年にアメリカのダウ・ケミカル社が,塩化ビニリデンを重合させたポリ塩化ビニリデンCH2-CCl2n(重合度nは約200)をサランという商標で市販しはじめた。ベロンVelon(アメリカ),クレハロンKrehalon(日本)もサランと同じ化学構造の繊維の商標である。…
※「ポリ塩化ビニリデン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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