江戸時代のキリスト教禁制下でキリシタンに拝された観音像。美しい白磁や青磁の像で、幕府に没収された。浦上三番崩れ(1856=安政3)のおりの岡部長崎奉行(ぶぎょう)の「浦上村百姓異宗の儀」の報告に「ハンタマルヤと申(もう)す白焼仏」「子を抱き候(そうろう)観音体の仏はリウス幼稚の砌其(みぎりその)母ハンタマルヤ養育いたし候姿、全く観音の像にて」「異宗の本尊はハンタマルヤと申、右流浪(るろう)中リウスと申仏を出産いたし候趣(おもむき)」などと記されている。生月(いきつき)島(長崎県平戸(ひらど)の西北方)のマリア像の左手に対し、マリア観音は右手に子を抱えている。
[野村暢清]
『浦川和三郎著『浦上切支丹史』(1943・全国書房)』▽『片岡彌吉著『かくれキリシタン』(1967・NHKブックス)』▽『『キリシタン研究 第一集~第19集』(1957~79・キリシタン文化研究所)』
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…オリエント世界に出現した初期キリスト教は,父子神信仰を正統的教義にすえたため,こうした母子神信仰を偶像崇拝として排斥したが,カトリックや東方正教は聖母マリア信仰という形で古代母子神信仰を事実上復活させている。そのカトリックが日本に伝来し,江戸幕府によって禁圧された際,マリア信仰は観音信仰と習合しマリア観音という特異な母子神信仰を生みだした。日本の母子神信仰では,この観音とともに鬼子母神(きしもじん)が出産・育児と結びつく代表的な崇拝対象である。…
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