一国の名目国民所得に対する通貨供給量の割合。家計や企業は,取引を円滑に行うため,その所得の一部分を通貨の形で保有する。この割合は,通貨以外の資産に投資した場合に得られる利回りや,通貨の使用に関する制度・慣習(クレジットの利用や給与支払の頻度等)に依存すると考えられるが,この点を初めて明確に記述したA.マーシャルの著書《貨幣,信用及び商業Money,Credit and Commerce》(1923)にちなんで,マーシャルのkと呼ばれている。名目国民所得は,実質国民所得Yと物価水準pの積であるから,通貨供給量をMとすると,次の関係式が成立する。
M=k×p×Y
貨幣数量説では,長期的な視点からkと実質国民所得が不変であると考え,通貨供給高と物価水準の比例関係を強調する。これに対し,ケインズ経済学では,短期的には物価水準が一定であると考え,通貨供給高とkの決定要因である金利,および実質国民所得の相互関係を重視する。このように,マーシャルのkは経済理論上重要な変数であり,また通貨供給量(マネー・サプライ)の適正水準を測る指標としても用いられている。通常日本では,通貨供給量の範囲として現金通貨(日本銀行券,補助貨),預金通貨(要求払預金),準通貨(定期性預金)の合計であるM2,ないしこれに譲渡性預金(CD)を加えたM2+CDを用いる。また国民所得の代りに国民総生産を使用することが多い。
執筆者:深尾 光洋
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…これは取引の総価値額の代りに名目国民所得を用いるもので,MV″=PYまたはM=kPYと書く(この方程式を〈現金残高方程式〉または〈ケンブリッジ交換方程式〉という)。ここで,V″は貨幣の所得速度,Pは物価水準,Yは実質国民所得,k(マーシャルのk)はV″の逆数=Yのうち貨幣の形で保有しておこうとする割合である。この定式化によって,取引総額が中間生産物や原材料や資本取引をも含みうることからくるあいまいさを除去するとともに,国民所得と総取引との間には一定の関係があり,その取引を円滑に行うため所得の一定部分kに等しい量の貨幣が人々によって需要されると考えた。…
※「マーシャルのk」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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