マータイ(読み)まーたい(英語表記)Wangari Muta Maathai

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マータイ」の意味・わかりやすい解説

マータイ
まーたい
Wangari Muta Maathai
(1940―2011)

ケニアの環境保護運動家。ケニア中部にあるニエリに生まれる。アメリカのマウント・セント・スコラスティカ大学で生物学を学び、1964年卒業、1966年にピッツバーグ大学で理学修士を与えられる。1971年ケニアのナイロビ大学で博士号を取得、引き続き同大学において家畜解剖学を教える。2004年にアフリカの女性として初のノーベル平和賞受賞した。

 1977年に環境保護と住民の生活向上を目ざすNGO(非政府組織)の「グリーンベルト運動」を創設した。この運動は、植林によって土地の砂漠化を阻止しようというもので、さらに植樹作業を貧困で苦しむ女性を動員して行うとともに職業教育等を授けることにより、地域の女性が収入を得られるようにした。運動は、ケニアのみならず、アフリカ各地に広がり、受賞時までに2500万本以上を植林、3万人以上の女性が参加している。また、環境保護活動を推進する一方で、女性の地位向上にも尽力し、1981年から1987年まで、ケニア女性国民会議の議長を務めた。その間、独裁的なモイ政権によって弾圧を受け、運動をやめるよう拷問されたこともあるが、屈せず活動を続け、2002年には国会議員当選、キバキ政権での環境・天然資源副大臣に就任している。「環境を保護し自然の破壊を防ぐことにより、資源をめぐる争いがなくなれば、平和を守ることができる」と語り、30年近くにわたり草の根運動を継続。それが評価され、ノーベル平和賞を受賞した。従来、平和賞は国際紛争の解決や人権保護活動に貢献した人に贈られていたが、ノーベル賞委員会は対象を環境保護分野にまで拡大する考えを2001年に示しており、彼女の受賞が初の適用となった。2005年(平成17)2月来日。「もったいない」という日本語に感銘を受け、環境保護の共通語として「MOTTAINAI」を世界に広める活動を始めた。2011年9月25日癌(がん)のためナイロビの病院で死去

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マータイ」の意味・わかりやすい解説

マータイ
Maathai, Wangari

[生]1940.4.1. ニエリ
[没]2011.9.25. ナイロビ
ケニアの政治家,環境保護活動家,フェミニズム指導者。フルネーム Wangari Muta Maathai。1964年にアメリカ合衆国のマウント・セント・スコラスティカ大学で生物科学の学士号を,1966年にピッツバーグ大学で生物学の修士号を取得した。ケニアに帰国後の 1971年,ナイロビ大学で獣医学の博士号を取得,東アフリカで博士号を取得した初の女性となった。1977年,土地の保全と女性の地位向上を目指し「グリーンベルト運動」を創設。貧しい女性を動員して,森林が破壊された地域の植林活動を始めた。運動はアフリカ諸国に広がり,約 3000万本が植林されるとともに,その過程で市民教育や環境教育などさまざまな事業に発展した。政治腐敗などを声高に批判したため 1970~80年代にはモイ政権とたびたび衝突し,一時投獄された。モイ退陣後の 2002年に国会議員に当選し,その後環境・天然資源・野生動物省副大臣に任命された。2004年,環境保護活動家として,またアフリカ人女性として初めてノーベル平和賞を受賞。著書に,『グリーンベルト運動-方法と体験共有のために』The Green Belt Movement: Sharing the Approach and the Experience(1988),"The Challenge for Africa"(2009)など。

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