マーリブ(その他表記)Ma'rib; Marib

デジタル大辞泉 「マーリブ」の意味・読み・例文・類語

マーリブ(Ma'rib)

イエメン西部の町。首都サヌアの東約120キロメートルに位置する。古代より交易の拠点として栄え、旧約聖書シバ女王と関わりがあるというサバ王国(シバ王国)の首都が置かれた。紀元前8世紀頃のダムや、太陽と月の神を祭る神殿遺跡がある。2023年、遺跡のある旧市街が「マーリブ:古代サバ王国の代表的遺跡群」の名称世界遺産文化遺産)に登録。同時に、政情不安による保存状態の悪さから危機遺産にも登録された。マアリブ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マーリブ」の意味・わかりやすい解説

マーリブ
Ma'rib; Marib

イエメン西部,イエメン高地の東麓に広がる都市および史跡。イスラム勢力が支配する以前のサバ王国(前950~前115頃。時期は諸説あり)の中心地であり,古代の城塞都市や巨大な灌漑用ダムの遺跡で有名。前7世紀に最盛期を迎えた。アラビア半島地中海を結ぶ隊商キャラバン)ルート上にあり,ハドラマウト地方南岸などでとれる乳香や没薬の取り引きを独占して栄えた。古代のマーリブダムは近くを流れるワディ(河谷)の調整池として建設され,全長約 550mをなす石積み構造で,水の流れを制御する水門もあった。周囲約 1600ha以上の土地を灌漑し,農業を支えた。ダムの最後については『コーラン』にも言及されている。
現在のマーリブの一部は遺跡を利用してつくられ,ラクダヒツジヤギを放牧して暮らすベドウィン族の中心地である。良質のウマも飼育される。イエメン高地を源流とするワディはいくつかあるものの,ルブアルハーリー砂漠に接する乾燥地帯のため,農業生産性はイエメンで最も低い。土地は砂漠との接点である標高 1000~2000mから東に向かって傾斜している。ヒツジ,ヤギ,ウシロバが飼育され,ナツメヤシが栽培される。1984年に近隣で大規模な油田が発見されて以降,石油産業の中心的役割を担っている。
サバ王国時代の神殿や集落跡,碑文などが残され,月の神アルマカ Almaqahをまつるバラン寺院跡は精巧な建築で有名である。当時の繁栄を物語る史跡の数々は2023年,「古代サバ王国のランドマーク,マーリブ」として世界遺産の文化遺産に登録された。人口 1万3863(2004)。

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改訂新版 世界大百科事典 「マーリブ」の意味・わかりやすい解説

マーリブ
Ma'rib

イエメンの中部,サヌアから約120km東の高原にある町。人口1万3000(1975)。サバ(シバ)の女王で知られるサバ王国(前1000ころ-前115)の都が置かれたところで,巨大なマーリブ・ダムが築かれた。ダムは数次の修復を経て約1000年にわたって維持されたが,575年崩壊したと伝えられる。サバ王国はインド洋と地中海を結ぶ香料貿易の集散地として繁栄したが,交易の中心地が他へ移り,国力が衰退してダムも崩壊したとされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーリブ」の意味・わかりやすい解説

マーリブ
まーりぶ
Mārib

アラビア半島の南部、イエメン共和国西部にある古代の遺跡。城砦(じょうさい)や神殿とともに石造りの巨大な灌漑(かんがい)用ダムの遺跡がある。また古代南アラビア文字の碑文も多数出土している。本格的な調査はいまだ実施されていない。マーリブはサバ王国の首都であったが、王国の起源やダムその他の遺跡の建造年代については定説がない。『旧約聖書』でソロモン王を訪れたシバの女王は、このサバ王国となんらかの関連があるものと考えられている。碑文は少なくとも紀元前5世紀にさかのぼる。王国は3世紀末にヒムヤル王国に併合されるが、ダムはその後もマーリブを潤していた。ダムの最後の修復の記録は542年で、その後しばらくして最終的に崩壊したようである。

[後藤 明]

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