もつ(読み)モツ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

もつ
もつ

内臓のことで、臓物の略語。食用とする内臓は肝臓が代表で、心臓、腎臓(じんぞう)、肺臓、脾(ひ)臓、胃、腸、そのほか脳髄、舌、足、尾、性器、耳、血液など広範囲のものを含んでいる。
 肉が主要な食物である民族では、食料として貴重な動物をつまさきから頭まで利用するのは当然である。現代でも、狩猟民族では獲物の血液を新しいうちに飲むことが行われている。もつを料理として手を加えた記録は、紀元1世紀(古代ローマ時代)の初めに書かれたといわれている料理書の始祖『料理について』(ガウィウス・アピキウスGabius Apicius著)である。この本にはブタ、子ヒツジ、ニワトリ、子ジカなどの肝臓の調理法などが書かれている。日本では、沖縄を除いて、肉食が一般化したのが明治以後であるため、もつ料理までが一般家庭に広まったのは第二次世界大戦後である。肉食が禁じられていた時代にも鹿(しか)狩りなどを薬(くすり)狩りと称し、養生食として肉を食べているが、このときに内臓を一部の人が食べている。長野県の南部では、郷土料理としてウマの腸を煮込んだ「おたぐり」が伝えられている。また、江戸時代に東北でまたぎとよばれた人たちの食事には内臓が含まれている点からみても、全国的に狩猟者は内臓を食べていたと考えられる。[河野友美]

種類と料理

もつはウシ、ブタ、ニワトリ、子ヒツジなどを用いるが、なかでもニワトリがくせが少なく扱いやすいので広く利用されている。肝臓(レバー、肝(きも))は薄い食塩水に浸(つ)けて血抜きをし、臭みをとる。焼き物、フライ、ソテーなど広範囲の料理にする。腎臓(キドニー。ブタではマメとよぶ)はウシ、ブタの場合、周囲にケンネ脂と白い薄皮のついているものは取り除き、横から切り開いて中の白い筋と管をていねいに取り除く。ニワトリではまるごと用いる。ソテー、焼き物、煮込みにする。心臓(ハツ)は血液のかたまりが中にあるので、切り開いて塩水でもみ洗いする。ウシ、ブタでは下ゆでして用いることも多い。焼き物、煮込み、ソテーなどにする。舌(タン)は、ゆでる、たたきつけるなどしてから皮を包丁でこそげ取り、タンシチュー、焼き物などにする。胃袋(シロ、ガツ。牛の第一胃はミノ、第二胃はハチノス、第三胃はセンマイ、第四胃をギアラとよぶ)は切り開き、塩をつけて内側をよく洗い、ゆでてから用いる。ニワトリの筋胃は砂肝(すなぎも)とよばれ、切り開いて砂袋を取り出す。煮込み、焼き物にする。腸(ヒモ。小腸をヒモ、大腸をシマチョウ、直腸をテッポウともよぶ)は開いてぬるま湯で洗って油抜きし、よくゆでてから焼き物、煮込みに用いる。沖縄ではブタの胃、小腸、大腸をまとめて中身(なかみ)とよび、柔らかくゆでてせん切りにし、吸い物仕立て(中身の吸い物)にしたものは祝膳(しゅくぜん)料理に欠かせない。脳髄(ブレンズ、ミソ)は豆腐状のもので、薄い塩水の中で血管を取り除き、ゆでてから用いる。フライ、てんぷら、バター焼きにする。尾(テール)はウシの尾が用いられ、毛を取り除き、関節ごとに切り分けて用いる。市販品では皮を取り除いて節切りしたものが多い。オックステールシチューなどの煮込み、スープにする。そのほか、肺臓(鳥以外)、胸腺(せん)(子ウシと子ヒツジのみ)、血液、耳、足、子宮(コブクロ)、アキレス腱(けん)、皮など多くの種類がある。いずれも、洗う、ゆでるなどして下処理し、焼き物、煮込みなどに用いる。もつ料理は新鮮な材料を入手し、香辛料、みそ、しょうゆ、酒類などを用いてにおい消しをする。市販品は下処理したものが多い。もつ料理としては各部位を用いた焼きとり(串(くし)焼き)、ホルモン焼き(焼き肉)、煮込みなどが外食で親しまれている。脳髄、レバーなどは新鮮なものを生食する場合もある。[河野友美]

栄養

もつはタンパク質のほかにビタミン、ミネラルの宝庫といわれる。とくに肝臓は他のもつより栄養価が高く、ビタミンAでは5グラム食べれば、ほぼ1日分のAがとれる。鉄は肝臓にとくに多く、心臓、腎臓にもかなり多い。脂肪の多いのは舌、胃腸、豚足、尾など。ビタミンではAのほかにB1、B2が多い。[河野友美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のもつの言及

【もつ料理】より

…内臓料理のことで,〈もつ〉は臓物の略。ただし,食肉以外の可食部分で,通常は内臓とはいわない脳,舌,足,尾などを使うものをこの名で呼ぶこともある。…

※「もつ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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