日本大百科全書(ニッポニカ) 「リゲル」の意味・わかりやすい解説
リゲル
りげる
Rigel
オリオン座のβ(ベータ)星の固有名。アラビア語の「巨人の左足 Rijl Jauzah al Yusra」の「足 Rijl」から来ている。当時は天球の外側から見た星座の姿を描いたので「左足」とされたが、実際に夜空に見えるオリオン座では右足にあたる。実視等級0.12等で青白く輝く。β星であるが、α(アルファ)星のベテルギウスよりも少し明るい。日本では古くは源氏星とよばれた(これに対し、三つ星を挟んで左上に赤く輝くベテルギウスは平家星とよばれた)。スペクトル型B8の超巨星で、表面温度は約1万3000K。質量は太陽の数十倍、半径は100倍程度と推定されている。天球上の位置は、2000年分点の座標で、赤経5時15分、赤緯マイナス8度12分で、距離は700光年。スペクトルを調べると、吸収線(主として水素バルマー線)の形が時間的に変化し、ときどき輝線が見える。これから、外層大気が秒速100キロメートル以上にも及ぶ速度で外部へ放出されていることがわかる。リゲルは光度8等の暗い伴星がゆっくり回っている実視連星でもある。この伴星自体がまた、9.86日の公転周期をもつ分光連星であり、両星ともスペクトル型B5の主系列星と考えられている。このように、リゲルは三重連星であるが、全体として毎秒21キロメートルで太陽系から後退している。
[北村正利・岡崎 彰]