翻訳|Limoges
フランス中西部,オート・ビエンヌ県の県都で,リムーザン地域の主都。人口13万3968(1999)。都市の発展は工業,とりわけ19世紀後半に頂点に達した陶磁器(リモージュ焼)の生産にその多くを負ってきた。また建設業の中心でもあり,現在は機械工業(自動車,電気)の発達もみられるほか,印刷・繊維工業も無視できない。都市化の遅れた後進農業地域の中にあって,商業・行政・文化(1808創設の大学がある)の中心地となっている。
執筆者:野澤 秀樹
リモージュはローマ時代にすでに繁栄し,3世紀に司教座が置かれた。初代司教聖マルシャルの墓上に9世紀に創設されたサン・マルシャル修道院は,その聖遺物のゆえに重要な巡礼地となり,リモージュはサンチアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路の宿駅をなした。ロマネスク様式の付属教会堂(フランス革命期に破壊)はリムーザン地方の中心的存在であり,11~13世紀には修道院工房から優れたエマイユ(七宝),金属工芸,写本画などが産み出された。特にエマイユでは,クロアゾネ技法に代わってシャンルベ技法を豊麗な色調をもって駆使し,モザン派やライン派と並ぶ大中心地となった。15世紀には彩釉エマイユが出現し,16世紀にはペニコーPénicaud,ノアイエNoailher,リムーザンLimousinなどの工房が栄え,以後今日まで陶磁器と並ぶ伝統産業として継続している。市立美術館(旧,司教居館)には,12世紀から現代に至るリムーザン地方のエマイユの収集がある。1768年,純度の高いカオリンが発見され,陶工マシエ,グレル兄弟がハード・ペースト磁器の製造を開始,1784年にはルイ16世の下にセーブル付属王室製磁工房となり,以後高級磁器製造の都市として知られる。国立アドリアン・デュブシェ美術館には,リモージュ焼を含む世界の陶磁史をたどる1万点を超す収集品がある。
サンテティエンヌ大聖堂はゴシック様式で再建されたもので(13~19世紀),ロマネスク様式の方形基部をもつ八角鐘塔は,リムーザン地方の特色である。サン・ミシェル・デ・リオン教会(14~16世紀),マルシャルの聖遺物とペニコーのステンド・グラス(16世紀)で知られるサン・ピエール・デュ・ケーロア教会(12~16世紀)や,12~13世紀の二つの橋も残る。
執筆者:岸本 雅美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランス南西部、リムーザン地方の中心都市。オート・ビエンヌ県の県都。ビエンヌ川の河畔に位置する。人口13万3968(1999)、13万3627(2015センサス)。行政、商業、文化の中心地であるが、18世紀に付近で陶土が発見され、以後陶磁器の産地として有名である。ほかに機械、靴、繊維、紙などの工業も発達している。町の歴史はローマ時代にさかのぼり、ガリアの一部族レモビケスLémovicesの首都であった。3世紀に聖マルシャルSaint Martialによってキリスト教がもたらされ、スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステラへ向かう巡礼者が立ち寄った。9世紀に修道院ができ、町はその周囲にも拡大した。13世紀にエナメル細工が発達したが、16世紀に宗教戦争で町は荒廃し、エナメル細工は衰えた。しかし18世紀に中国製品の導入による陶磁器生産で繁栄を取り戻した。ゴシック様式の司教座教会サンテティエンヌ教会(13~19世紀)や、15世紀のステンドグラスがあるサン・ミシェル・デ・リオン教会(14~15世紀)、13世紀の橋、陶磁器を中心とするアドリアン・デュブシェ博物館などがある。
[青木伸好]
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…2.1m×3.5m)である。西欧においては,11~12世紀にエマイユ・シャンルベが栄え,フランスのリモージュと,ライン・マース(ムーズ)川流域のモザン地方(モザン美術)とが,二大中心地をなした。リモージュでは静かな濃紺が支配的であり,〈ジョフロア・プランタジュネの七宝板〉(12世紀。…
…リモザンLimosinとも書く。リムーザン家はリモージュの七宝細工工房の最も有名な家系で,16世紀前半から17世紀末までの系図がほぼ明らかになっている。彼はその始祖とされる。…
※「リモージュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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