ルシャトリエの法則(読み)ルシャトリエのほうそく(英語表記)Le Chatelier's law

精選版 日本国語大辞典 「ルシャトリエの法則」の意味・読み・例文・類語

ルシャトリエ の 法則(ほうそく)

  1. 平衡状態にある系に平衡を乱すある要因が加わった場合、その効果を弱める方向に平衡が移動するという法則。ル‐シャトリエが発見したが、ドイツ人K=F=ブラウンも同様の発見をしているところから、ルシャトリエ‐ブラウンの法則とも呼ばれる。平衡移動の法則。

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改訂新版 世界大百科事典 「ルシャトリエの法則」の意味・わかりやすい解説

ル・シャトリエの法則 (ルシャトリエのほうそく)
Le Chatelier's law

化学平衡の状態にある反応混合物に,外部から平衡を破るような変動温度圧力など)が加わったとき,その変動を打ち消す方向に反応が進み新しい平衡状態に達するという法則。この法則はH.L.ル・シャトリエ(1884)およびK.F.ブラウン(1887)が導いたものなので,ル・シャトリエ=ブラウンの法則ともいう。たとえば,化学平衡にある系に熱を加えて温度を上げると,吸熱の方向に反応が進み,冷却して温度を下げると,発熱の方向に反応が進み新しい平衡に達する。また加圧すると,反応系の体積が減少する方向に,減圧すると,体積が増大する方向に反応が進む。この法則は,J.H.ファント・ホフにより同じころに見いだされた平衡移動の法則を一般化した表現とみなすこともできる。この法則は化学平衡ばかりでなく,相平衡などにも適用できるが,実は平衡状態の安定性を述べたもので,閉じた系に対してはつねに成り立つことが保証されている。
化学平衡
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岩石学辞典 「ルシャトリエの法則」の解説

ルシャトリエの法則

化学平衡にある系では,平衡を決める因子の一つの変動の結果変化を受けるが,その変化は考えている因子を逆方向に変動させるように働くという法則である[長倉ほか : 1998].すなわち平衡に達した場合に,温度,圧力,組成の平衡に関係した要素のどれかが変化すると,平衡を回復する方向に反応が起こる[Wahlsrom : 1950].この法則は一般にはこの通りには成り立たない場合があることがエーレンフェスト(P. Ehrenfest)により指摘され,厳密には“化学平衡において,ある示量変数を変化させることにより生じる相当する示強変数の変化は,反応が凍結されている場合に比べて平衡が維持されている場合の方が小さく,またある示強変数を変化させることにより生じる相当する示量変数の変化は,反応が凍結されている場合より平衡が維持されている場合の方が大きい”と述べている[長倉ほか : 1998].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルシャトリエの法則」の意味・わかりやすい解説

ル・シャトリエの法則
ル・シャトリエのほうそく
Le Chatelier's law

熱力学的平衡移動に関する法則。ある熱力学的平衡状態にある系が,外部からの作用で平衡を乱された場合,その作用の効果が弱められる方向にその系の状態が変化するという法則。たとえばアンモニア合成反応において水素,窒素の混合気体に圧力を加えると,加圧効果を少くする方向,すなわちアンモニアの生成する方向にその系の状態は変化する。 1884年 H.L.ル・シャトリエによって発表されたが,のちに K.F.ブラウンによって補足されたため,ル・シャトリエ=ブラウンの法則ともいう。この法則は熱力学的関数が極値をとるということから熱力学的に導かれ,またオンサーガーの相反定理に基づいた一般化も試みられている。

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法則の辞典 「ルシャトリエの法則」の解説

ル・シャトリエの法則【Le Chatelier's law】

平衡にある系に外力が加えられたとき,系は外力の効果を弱める方向に変化する.ル・シャトリエの原理*ル・シャトリエ‐ブラウンの法則*などとも呼ばれる.

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