日本大百科全書(ニッポニカ) 「レイモント」の意味・わかりやすい解説
レイモント
れいもんと
Władysław Stanisław Reymont
(1867―1925)
ポーランドの小説家。本名レイメントRejment。農村の教会オルガン弾きの息子に生まれる。仕立屋に奉公し、16歳ごろからはウルバンスキの名で旅回りの芸人の仲間に加わる。鉄道労働者を経て1893年からワルシャワで文学活動に専心する。ヨーロッパ、アメリカへの旅も数多い。代表作の一つ、中編『喜劇女優』(1896)では、若い旅役者の運命を描き、また『約束の土地』(1899)では当時繊維業の発達とともに急速に資本主義化したウッチ市の状況を投機、破産、労働者搾取の巨大な腫瘍(しゅよう)として描いた。1924年のノーベル文学賞の対象となった『農民』(1904~09)は秋、冬、春、夏の四巻からなり、ポーランド農民の生活を、父親の若い後妻と息子との恋を中心にした劇的な葛藤(かっとう)のなかに描いた名作である。
[吉上昭三]