〈若きポーランド〉期を代表するポーランドの作家。1924年にノーベル賞を受賞。農村の教会オルガン奏者の子に生まれ,仕立職人,旅回りの役者,鉄道員,心霊術の霊媒などの豊かな人生経験をもとにした小説《女役者》(1896),《動揺》(1897)などで作家としての地歩を固めた。観察の確かさ,生き生きとした描写力は比類ないものがあるが,一方,構成の緊密さ,作品を貫く思想に欠けるものがあると評される。《秋》に始まり《夏》に終わる四季の名を冠した4巻の長編で,ノーベル賞受賞作品《農民》(1904-09)は世界の農村文学の最高傑作とされる。永遠の繰返しである自然のリズムと深く結びついたポーランドの農村の一年の暮しを背景に,ひとりの女と土地相続をめぐる父と子の確執を描いたこの小説にも,急速な発達を遂げる工業都市ウッチの町とそこに蝟集(いしゆう)する〈金の亡者〉たちの生態を克明に描いた《約束の地》(1899)にも,自然主義の影響が色濃くみられる。《約束の地》は資本主義勃興期の都市を最もみごとに写し取った作品として高い価値をもつ。ほかに歴史小説四部作《1794年》(1913-18)などがある。
執筆者:小原 雅俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ポーランドの小説家。本名レイメントRejment。農村の教会オルガン弾きの息子に生まれる。仕立屋に奉公し、16歳ごろからはウルバンスキの名で旅回りの芸人の仲間に加わる。鉄道労働者を経て1893年からワルシャワで文学活動に専心する。ヨーロッパ、アメリカへの旅も数多い。代表作の一つ、中編『喜劇女優』(1896)では、若い旅役者の運命を描き、また『約束の土地』(1899)では当時繊維業の発達とともに急速に資本主義化したウッチ市の状況を投機、破産、労働者搾取の巨大な腫瘍(しゅよう)として描いた。1924年のノーベル文学賞の対象となった『農民』(1904~09)は秋、冬、春、夏の四巻からなり、ポーランド農民の生活を、父親の若い後妻と息子との恋を中心にした劇的な葛藤(かっとう)のなかに描いた名作である。
[吉上昭三]
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