日本大百科全書(ニッポニカ) 「ろくろ」の意味・わかりやすい解説
ろくろ
ろくろ / 轆轤
spinning lathe
主として回転運動によって円形の器物をつくる機械で、木工用、焼物用、金属加工用などがある。また、重い物を引いたり持ち上げたりする巻上げ機、船の錨(いかり)を引き上げる揚錨(ようびょう)機、車井戸のつるべを上下させる滑車、傘の先の骨が集まって、傘を開閉させる仕掛けの部分などもろくろと称する。
木工用ろくろは、加工物を保持し回転運動を与える主軸とその駆動装置、および作業面としての木製テーブルを備えた簡単な構造である。原則として手持ちバイトが使用され、作業姿勢は座位、腰掛けが多い。木工用ろくろは、古代から椀(わん)、鉢、皿などの食器や、こけしやこまなどの玩具(がんぐ)を製作するのに用いられてきた。二人びきろくろという可搬式ろくろが現在のろくろの原型で、日本における木工旋盤の元祖ともいわれている。外国では、紀元前300年ごろのエジプトの墓の壁画に、二人びき立て形綱ひきろくろの図があり、世界最古の旋盤といわれている。
焼物用ろくろはろくろ台ともよばれ、その回転力を使って粘土の塊から器物を成形するために使われるものと、単なる回転細工台とがある。成形用ろくろには、手で回転を与える手ろくろ、足で回す蹴(けり)ろくろ、電動ろくろなどがある。ろくろの回転方向は日本ではほとんどが右回りであるが、中国や欧米では左回りが用いられる。
金属加工用ろくろは、スピニング成形機とよばれ、ろくろ旋盤、あるいはへら絞り旋盤とも称される。へらまたはロールで板金を母型に押し付けて、円筒あるいは円錐(えんすい)状などのカップを回転成形する機械である。素材には円板を使用するが、プレスにより絞り加工された製品の縁切り、縁巻き、へら掛け、紐(ひも)出し、口つぼめのような仕上げ加工も容易にできる。
[清水伸二]