ローマ人への手紙(読み)ローマびとへのてがみ(英語表記)Pros Romaious; The Letter to the Romans

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローマ人への手紙」の意味・わかりやすい解説

ローマ人への手紙
ローマびとへのてがみ
Pros Romaious; The Letter to the Romans

新約聖書パウロ書簡の一つ。ローマ書ともいう。おそらく 57年頃書かれ,パウロ書簡中最も重要なものの一つで,アウグスチヌスから K.バルトにいたるまで神学上の有力な典拠となった。あて先のローマ教会はパウロの創設によるものではなく,パウロはローマをヨーロッパ伝道の起点とすべくローマ教会にその福音についての見解を示したと思われる。書簡の体裁をとるが,「福音は,ユダヤ人をはじめ,ギリシア人にも,すべて信じる者に,救いを得させる神の力である。神の義は,その福音のなかに啓示され,信仰に始り信仰にいたらせる」 (1章 16~17) という主題のもとに組織的な構成をもつ神学書。第1部 (1~8章) では「人が義とされるのは律法の行いによるのではなく信仰によるのである」 (3章 28) という信仰義認説アブラハムの例によって説かれている。第2部 (9~16章) ではイスラエルの救いの歴史と異邦人の救いの問題,キリスト教倫理,信仰の弱い者と強い者との関係についてそれぞれ述べられている。現代神学においても,K.バルトの『ローマ書』 Der Römerbrief (1919) を介して,重大な影響を及ぼしている。

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