アイゲン(読み)あいげん(その他表記)Manfred Eigen

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイゲン」の意味・わかりやすい解説

アイゲン
あいげん
Manfred Eigen
(1927―2019)

ドイツの物理化学者。音楽家の息子としてボーフムに生まれる。ゲッティンゲン大学に学び、1951年博士号を得た。同大学で助手を務め、1953年にマックス・プランク研究所物理化学部門の助手、1964年以降同部門の部長となる。1967年、化学反応論の業績によりG・ポーターノリッシュとともにノーベル化学賞を受賞した。1954年以降、化学反応におけるいわゆる緩和法を開発し、100万分の1秒以下の高速度反応の機構を解明した。緩和法とは、平衡状態にある溶液の条件(温度圧力、電場など)を変化させ、その際の状態をスペクトル分析などにより解析する方法をいう。のちにこの方法を生化学反応にも適用し、核酸、タンパク質などの形成機構を説明した。なお、彼はこうした理論を応用し、1996年に牛海綿状脳症BSE、俗称「狂牛病」)の病原体であるプリオンに関する論文を発表し低濃度病原体の検査法を導いた。

[髙山 進]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイゲン」の意味・わかりやすい解説

アイゲン
Eigen, Manfred

[生]1927.5.9. ボーフム
[没]2019.2.6. ゲッティンゲン
ドイツの物理化学者。音楽家の子として生まれ,1951年ゲッティンゲン大学物理学,化学を学び博士号を取得。1951~53年同大学講師を経て,ゲッティンゲンのマックス・プランク物理化学研究所(→マックス・プランク研究所)に入所。1964年同所長。1971年,物理化学部門と分光学部門を合併しマックス・プランク生物物理化学研究所を設立すると,1995年の引退まで所長を務めた。強電解質物質の溶液の研究,水和イオンの相互作用に関する統計力学,会合性溶媒の熱伝導比熱,会合分子間の陽子移動の機構の研究などで知られる。1967年,短時間エネルギーパルスでの均衡擾乱による超高速化学反応の研究で,ロナルド・ノリッシュ,ジョージ・ポーターとともにノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞。のちに,この手法を生体系の反応にも応用した。そのほか,1956年ボーデンシュタイン賞,1962年オットー・ハーン賞,1992年パウル・エールリヒ・アンド・ルートビヒ・ダルムシュテッター賞など受賞多数。また,15の名誉博士号を授けられ,アメリカ科学アカデミーなど国内外の数多くのアカデミー会員を務めた。

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改訂新版 世界大百科事典 「アイゲン」の意味・わかりやすい解説

アイゲン
Manfred Eigen
生没年:1927-

ドイツの物理化学者。高速反応速度測定法としての化学緩和法を開発し,それまで測定不可能とされていた中和反応を含む多くの高速反応の速度測定法を確立した。この業績により,1967年ノーベル化学賞を受けた。ゲッティンゲンのゲオルク・アウグスト大学で物理学と化学を学び,1951年学位を得た。53年マックス・プランク物理化学研究所に移り,それ以降の約10年間に超音波吸収法と電場,温度および圧力ジャンプ法を含む化学緩和法を確立し,多くの高速反応速度を測定してそれらの機構を明らかにした。60年以降の研究は生物化学系の速度過程に重点がおかれている。
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化学辞典 第2版 「アイゲン」の解説

アイゲン
アイゲン
Eigen, Manfred

ドイツの物理化学者.ゲッチンゲン大学に学び,1951年同大学で学位を取得.1953年マックス・プランク協会物理化学研究所に入り,のちに同研究所所長となる.化学緩和法を開発し,この方法を用いて水溶液中における水,酸および塩基の解離と再結合など,超高速のプロトン移動反応速度を測定することにはじめて成功した.その後は主として生物物理化学的研究をした.高速反応の研究によりR.G.W. Norrish(ノリッシュ),G. Porter(ポーター)とともに,1967年ノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「アイゲン」の意味・わかりやすい解説

アイゲン

ドイツの物理化学者。ゲッティンゲン大学で学ぶ。1953年よりマックス・プランク物理化学研究所研究員。溶液内におけるイオン反応の動力学的研究を行う。短時間パルスによる平衡状態攪乱(かくらん)でもたらされる超高速化学反応の研究で,G.ポーター,R.ノリッシュとともに1967年ノーベル化学賞。

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