アイロニー(英語表記)irony

翻訳|irony

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アイロニー
irony

反語。単語または文章において,表面の意味とは逆の意味が裏にこめられている用法。多くは嘲笑や軽蔑を表わす。ソクラテスが議論において意図的に無知を装ったのはその典型で,これを「ソクラテス的アイロニー」と呼ぶ。他方,語り手がみずからのおかれている状況を十分に認識していないために,その言葉に他人からみれば意図せざる意味が加わる場合,これを「悲劇的アイロニー」または「ソフォクレス的アイロニー」と呼び,悲劇的人物のせりふにしばしば認められる。

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デジタル大辞泉の解説

アイロニー(irony)

《「イロニー」とも》
皮肉。あてこすり。
反語。逆説。
修辞学で、反語法。
ソクラテスの問答法。無知を装いながら、知者を自認する相手と問答を重ね、かえって相手が無知であることをあらわにし、その知識が見せかけのものでしかなかったことを悟らせる。

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百科事典マイペディアの解説

アイロニー

皮肉,反語ギリシア語エイロネイア(〈装われた無知〉の意)に由来し,ドイツ語ではイロニーIronie。言わんとすることの反対を述べることによって言わんとすることをいっそう効果的に相手に理解させる方法。(1)ソクラテスのアイロニー。ソクラテスは無知をよそおって他人の教えをこうことにより,かえって相手に無知を自覚させた。(2)ロマンティック・アイロニー。ロマン派(ロマン主義),ことにドイツ・ロマン派では,フィヒテの自我哲学の影響の下,対象の英雄主義的超越の契機とされた。(3)詩的言語の特性としてのアイロニー。ニュー・クリティシズムロシア・フォルマリズムでの批評装置のひとつ。

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世界大百科事典 第2版の解説

アイロニー【irony】

語源はギリシア語のエイロネイアeirōneiaで〈よそおわれた無知〉を意味する。イロニーともいう。(1)ソクラテスは無知をよそおう問答法で相手を真の知識に導いたといわれ,これを〈ソクラテスのアイロニー〉と呼ぶ。その後,修辞学でその積極的な活用法が論じられ,相手に強い印象を与えるための修辞法の一つに数えられた。(2)文学では,とくに作劇の一つの技法として注目され,〈劇的(ドラマティック)アイロニー〉〈悲劇的(トラジック)アイロニー〉などの術語がある。

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大辞林 第三版の解説

アイロニー【irony】

〔イロニーとも〕
皮肉。あてこすり。また、皮肉を含んだ表現。風刺。
〘哲〙知者を自認する相手を問いつめ、無知の自覚を促す、ソクラテス的問答法の一性格。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アイロニー
あいろにー
irony

日本語では「皮肉」と訳され、遠回しの非難、当てこすりの意味で使われるが、近代西洋語では、自分の意図する意味と反対の意味をもつ表現(たとえば「君はたいしたものだ」)によって、意図する意味(この場合は相手に対する軽蔑(けいべつ))を表す修辞技法を一般にさす。類比関係に基づかないという点で比喩(ひゆ)とは区別され、また肯定、否定を逆にするのでなく、反対概念を意味する点で修辞疑問と異なっている。元来は古典ギリシア語で「意図的に装われた無知」を意味するeirneiに共通の語源をもち、プラトンの『対話篇(へん)』中のソクラテスの態度をさすことが多かった。F・v・シュレーゲルは逆に、文学作品において作者の意図が達せられないことを表すために、ロマン的イロニー(アイロニー)という概念を提出した。演劇では、観客にはストーリーの結末がわかっていても、登場人物にはそれがわからないこと(たとえば『オイディプス』におけるように)をさし、転じて一般に意図せざる結末(「運命のいたずら」ironie du sort)を意味することがある。[土屋 俊]

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精選版 日本国語大辞典の解説

アイロニー

〘名〙 (irony)
① 軽い皮肉を含んだ逆説的な表現。皮肉。風刺。反語。イロニー。
※落葉(1889‐90)〈内田魯庵〉「スヰフトの反語(アイロニイ)を用ゆる伎倆の真に古来稀なるは」
② ソクラテスの問答法における無知のよそおい。

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世界大百科事典内のアイロニーの言及

【ロマン主義】より

… ドイツでは,1770年ころからフランスの文化支配を脱し,啓蒙主義に対抗して個人の感性と直観を重視する反体制的な文学運動シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)が展開されたが,そのほぼ20年後にシュレーゲル兄弟,ティーク,シュライエルマハーらによって提唱されたロマン主義文学理論は,この運動の主張を継承し,フランス古典主義に対抗するものとしてのロマン主義を明確に定義づけ,古代古典文学の再評価とドイツに固有の国民文学の創造を主張した。フィヒテやヘーゲルの観念論哲学と密接な関係をもったドイツ・ロマン主義文学は,自我の内的活動の探究,夢と現実あるいは生と死の境界領域の探索,イリュージョンの形成と自己破壊(アイロニー)などを主題とするきわめて観念論的かつ神秘主義的な色彩を帯び,ノバーリス,J.P.リヒター,ホフマンらの幻想的な作品を生み出した。 フランスにおけるロマン主義は,ルソー以来の前期ロマン主義の精神風土の上に,スタール夫人のドイツ文学理論の紹介《ドイツ論》や,ゲーテやバイロンの作品の翻訳の刺激を受けて,両国に比べやや遅れて始まったが,よりいっそう激しい華やかな展開を見せた。…

※「アイロニー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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