アシタバ

食の医学館 「アシタバ」の解説

アシタバ

《栄養と働き》


 アシタバは日本原産の多年草で、伊豆地方や房総半島海岸に自生しているセリ科の植物です。若葉をつんでもその翌日には新しい葉がでてくることから、その名がつきました。それほど生命力が旺盛な植物で、古くから不老長寿妙薬とされています。四季を通じて収穫できますが、2月~5月ごろが旬(しゅん)です。
〈ビタミンB群を豊富に含むのが特徴〉
○栄養成分としての働き
 脳のエネルギー代謝に欠かせない栄養素はたくさんありますが、そのうち9種類がビタミンB群です。アシタバはビタミンB12以外のほとんどのB群を含んでいます。なかでもビタミンB2は、100g中0.24mgと比較的多く含んでいます。B2は細胞の再生にかかわり、健康な皮膚や爪をつくるのに欠かせません。
 体の中でビタミンAにかわるカロテンが豊富に含まれているので、がんや動脈硬化の予防にも役立ちます。
 カルシウムマグネシウム、鉄などのミネラル類も豊富。とくにカリウムは100g中540mg含み、血圧降下作用もあります。さらに微量ですが、老化防止、抗がん、催眠作用などがあるメラトニンも含みます。
 その他、食物繊維も100g中5.6gを含み、便秘予防、肥満防止にも役立ちます。
 アシタバの茎や根茎を切ると黄色い汁がでますが、この汁の主成分であるカルコンとクマリンには、細胞のがん化をうながす物質を抑制する働きがあります。とくにカルコンは、アシタバ以外の植物にはあまり含まれていない成分です。潰瘍(かいよう)のもとになる胃酸の分泌を抑える働きや血栓(けっせん)を予防する作用があるともいわれています。また、抗菌作用があることもわかってきています。さらに、薬効として利尿・緩下(かんげ)作用があり、とくにルテオリンという成分は強心・利尿剤としてよく知られています。この利尿作用により、むくみを改善します。むくみやすい人はアシタバ茶を常飲するといいでしょう。
 そのほかビタミンKなども含まれます。

《調理のポイント》


 独特の香りとにがみがあるアシタバは、通常ゆでてから調理します。ゆでるときは手早くお湯からだし、水にさらしてアクを抜きます。おひたしやゴマ和え、サラダ、バター炒(いた)めなどに使われ、てんぷらにするとカロテンの吸収がアップします。

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改訂新版 世界大百科事典 「アシタバ」の意味・わかりやすい解説

アシタバ
Angelica keiskei(Miq.)Koidz.

海岸に生える大型のセリ科の多年草。若葉を摘んで食用にする。和名明日葉の意味で,生長力が旺盛で,葉を摘んでも明日になるとまた新しい葉が伸び出すところからついた。地下には太い根茎があり,葉は大きく,2回羽状複葉となって,やや厚くて光沢があり,長い葉柄がある。茎は高さ1m余りになって直立し,中空で円筒形。茎や葉を切ると,独特の匂いがあり,淡黄色の汁がでる。花は小さく淡黄白色で,5月から10月頃まで,複散形花序に多数つき,長さ1cm内外で楕円形の果実ができる。若い柔らかい葉は多少苦味があるが,セロリのように食べられる。関東南部から紀伊半島に至る太平洋の海岸に分布する。ハマウドA.japonica A.Grayは暖地の海岸に生え,アシタバに非常によく似ているが,小葉はやや卵形,果実の基部が陥入する。汁はやや白く,あくがはるかに強いので食べない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アシタバ」の意味・わかりやすい解説

アシタバ(明日葉)
アシタバ
Angelica keiskei

セリ科の多年草。関東地方南部から東海地方,紀伊半島,そして伊豆七島にかけての地域の海岸に生える。茎は強壮で,上部でよく分枝し,高さ 1.2mほどに達する。葉は1~2回3出の羽状複葉で,縁にあらい鋸歯をもつ。8~10月に淡黄色の花を開き,枝の先にたくさん集って複散形花序 (→散形花序 ) をつくる。若葉は食用にする。和名は葉を切取っても,あしたには再び若葉を出すという意味である。同属のハマウド (浜独活)は全体によく似るが,アシタバのように茎葉を切っても黄色の汁を出さないので容易に区別できる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシタバ」の意味・わかりやすい解説

アシタバ
あしたば / 明日葉
[学] Angelica keiskei (Miq.) Koidz.

セリ科(APG分類:セリ科)の多年草。海岸沿いの草原や林縁に生える。茎は高さ約1メートル、切り口から黄色の汁を出す。葉は大きく、質は厚いが柔らかく、光沢があり、1~2回3出の複葉。上部の葉は退化して、葉柄が膨らんだ袋状の鞘(さや)のみとなる。花期は8~10月、複散形花序に多数つき、淡黄色。花序には総包葉がない。果実は長楕円(ちょうだえん)形、左右に狭い翼がある。関東地方南部から太平洋に沿って紀伊半島までの本州、伊豆諸島、小笠原(おがさわら)に分布。若葉を食用とする。名は、きょう摘んでも明日若葉が萌(も)え出るほどじょうぶであることにちなむ。八丈島に多くハチジョウソウの名もある。

[門田裕一 2021年11月17日]


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百科事典マイペディア 「アシタバ」の意味・わかりやすい解説

アシタバ

セリ科の多年草。関東南部〜紀伊半島,伊豆七島,小笠原の海岸にはえる。高さ1〜2m,よく枝を分け,葉は大きな2回羽状複葉で無毛,質厚く柔らかい。茎葉を切ると黄色の汁が出る。秋,複散形花序をつけ,淡黄色の小花を多数開く。若葉を食用にする。きょう摘んでもあしたすぐ葉が出るので〈明日葉〉の名がある。八丈島に多いのでハチジョウソウともいう。ハマウドはアシタバに似ているが,葉のつやが強く,茎葉を切っても黄色の汁が出ない。関東〜沖縄,台湾に分布。

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栄養・生化学辞典 「アシタバ」の解説

アシタバ

 [Angelica keiskei].セリ目セリ科シシウド属の多年草.若葉を食用にする.

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