木綿やナイロンなどの繊維上で、アゾ染料をつくる染色法で、ナフトール染料、氷染(ひょうせん)染料ともいう。まず繊維に染着性を有する下漬(したづけ)剤をアルカリ溶液から繊維に染めておく。下漬剤は無色から淡黄色のもので、ナフトールASが代表的である。下漬剤で染めた繊維を酸性浴中で氷冷しながら芳香族アミン(顕色(けんしょく)剤)のジアゾニウム塩で処理すれば、ただちに水不溶性のアゾ色素が繊維上で合成され発色する。下漬剤と顕色剤の組合せにより、黄色から緑、さらには黒までの発色が可能である。橙(だいだい)色から赤色、さらに深い色には2-ヒドロキシナフトエ酸から合成される下漬剤が用いられるが、黄色の発色にはナフトールAS-G(N,N'-ビスアセトアセチルトリジン)が用いられる。アゾイック染料は鮮明で、濃色かつ耐光堅牢(けんろう)度も比較的に高く、水に不溶性の色素を生成するので洗濯堅牢度も高いことから、じょうぶで多様な染色に利用されている。しかし、摩擦堅牢度に若干弱い欠点がある。また、顕色剤である芳香族アミンを亜硝酸ナトリウムと塩酸でジアゾ化して用いなければならない欠点がある。この改良としてファストソルトがある。これは顕色剤である芳香族アミンのジアゾニウム塩を塩化亜鉛で安定化したもので、これを用いれば、ジアゾ化の処理を省くことができる。安定化したジアゾニウム塩と下漬剤を混合して粉末としたものをラピドーゲンという。これをペースト状にして、木綿に捺染(なっせん)後、塩酸処理すれば発色する。アゾイック染料は顔料にも用いられ、この場合にはアゾイック顔料という。
[飛田満彦]
水溶性基をもたないカップリング成分(下漬剤)とジアゾ成分(顕色剤)とを繊維上でカップリングさせて不溶性アゾ染料をつくることにより染色の目的を達する染料で,ナフトール染料naphthol dyeともいわれる。主としてセルロース系の染色に使用される。まず下漬剤(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸,およびそのアリールアミド誘導体)のアルカリ溶液に繊維を浸して吸収させたのち,顕色剤(適当な芳香族第一アミンのジアゾ溶液)に入れて繊維上で不溶性のアゾ色素を生成させる。上記アリールアミド誘導体は一般にナフトールASといわれる。下漬剤と顕色剤の組合せで色は黄みがかった赤から青まで得られるが,一般には赤系が多い。色も美麗で耐光・洗濯・塩素堅牢度も高く,安価であるが,摩擦堅牢度が劣るものがある。捺染用の目的で,ジアゾ化合物を塩化亜鉛との複塩とした安定ジアゾ化合物をナフトールAS類に混合し,捺染後酸処理することもある。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
それぞれ水溶性の2成分(ジアゾ成分とカップリング成分)を,セルロース繊維上で反応(カップリング)させ,水に不溶のアゾ染料として染色の目的を達するもので,既製の染料ではない.カップリング成分として,N-フェニル-3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキサミド類の開発以後,アントラセン,カルバゾール,ベンゾフランなどの芳香族N-フェニルサリチルアミド類や,アセトアセトアニリド類,ピラゾロン類も用いられている.ジアゾ成分は,各種芳香族第一級アミンを冷時酸性下に亜硝酸ナトリウムで処理することによって得られる.染色は,まずカップリング成分の水酸化ナトリウム水溶液に繊維を浸して(30~35 ℃)染着させ,いったん乾燥したのち,ジアゾ成分の氷冷水溶液に再度浸して発色(顕色)させ,最後にソーピングにより未反応成分や非染着染料を除く.一般に,ジアゾ成分は染色直前にジアゾ化して使用するが,染色操作をより簡便なものにするため,あらかじめジアゾ化し,比較的安定な塩化亜鉛複塩,あるいは芳香族スルホン酸塩としたものを用いる方法もある.アゾイック染料は,一般に色相が豊富,かつ鮮明である.また,各種堅ろう度もすぐれ,なかにはアントラキノン系建染め染料に匹敵するものもある.木綿,レーヨンなどセルロース繊維の染色に重要である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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