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イグサ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イグサ

イ(藺)」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イグサ
いぐさ / 藺草
mat rush
[学]Juncus decipiens Nakai

イグサ科の多年草。イまたはトウシンソウ(灯芯草)ともいう。地下茎が泥土中をはい、その各節間は短く詰まっている。地下茎から多数の細い茎が伸び立ち、株状になる。高さ20~60センチメートル、直径1~2ミリメートルの茎は変異が大きく、とくにコヒゲともよばれる栽培品種は、高さ120~150センチメートル、直径2~3ミリメートルもある。茎の中には白い髄がある。葉は退化して短い鞘(さや)状をなし、赤褐色でつやがあり、茎の基部に数枚つく。初夏から秋口まで、茎の先端から下方10~30センチメートルのところに小さな花穂をつけ、多数の緑褐色の小花を開く。果実は倒卵形で、長さ2~3ミリメートル、3室に分かれ、その中に長さ0.5ミリメートルほどの種子が10~20個入る。
 北海道から沖縄までそれぞれ山野の湿地に自生し、さらに東アジアにも広く分布する。イグサの茎は畳表や花莚(はなむしろ)の材料として、また茎の髄は行灯(あんどん)などの灯芯に利用され、江戸時代には各地で灯芯用に栽培された。現在では畳表や花莚用のほか、わずかに墨の原料とする煤煙(ばいえん)用の灯芯や利尿用の民間薬として使われるのみで、採芯(さいしん)栽培は少ない。芯をとった皮はじょうぶで、ちまきや笹団子(ささだんご)などを縛るのに使われる。[星川清親]

栽培

畳表や花莚用として古くは野生のものを利用していたが、需要の増加に伴い16世紀ころから栽培するようになった。栽培は日本全土で可能であるが、良質のものを得るには、春の分げつ増加期が温暖であること、茎の伸長する初夏が高温多湿であること、また刈り取ったイグサを天日乾燥するために、収穫期の7月後半に晴天が続くことなどが必要である。このため、昔から、おもに岡山県を中心とした瀬戸内地方で栽培されてきた。
 増殖は株分けによる。まず、冬に株分けして畑の苗代に植え付け、分げつを増やす。翌年の夏に再度株分けし、水田の苗代に植え換える。これを12月ころに株分けしながら、1平方メートル当り30株前後の密度で水田(本田)に移植する。畑苗代のまま次の冬まで置いて本田に移植することもあるが、苗数の増加率は悪くなる。本田の管理は、翌年の5月ころまでは水を入れたり切ったりして根の発育を促す。丈が1メートルを超えると、自然に倒れて品質や収量の低下原因となるため、6月初めころに網を張り、網目で茎を支え、これを徐々に高くしていって倒伏を防ぐ。7月中旬から下旬にかけて茎のつやが増し、弾力のある強さが出てきたら刈り取る。収穫は早朝や夕方、日差しの強くないときに行う。収穫後、20センチメートルほどの束にして泥水につけ、泥(どろ)染めをする。泥染めは、イグサ全体を均一に早く乾燥させ、つやを保ち、芳香をつけ、変色を防ぐために行われる。泥染め後、水を切り、地面に並べて天日乾燥を行う。最近では乾燥機も使われる。乾燥後は湿度の低い暗い所に保存する。
 畳表には、1本の茎を横に引き通しで使うため、茎の長さは畳表の幅に相当する1.5~1.6メートルを上等とし、長藺(ながい)とよばれる。栽培中、光が下まで通らないと基部近くが白くなり(元白(もとしろ)という)、畳表の色合いを乱して品質を損なう。また、緑色が強すぎると変色が速くなるので、銀のような光沢のある緑白色のものが上質とされる。茎の太さがそろっていることも重要で、太すぎると畳表が粗い感じがするし、細すぎると弱い畳表となり、乾いた茎で、直径1.2~1.3ミリメートルのものがよいとされる。また、花のついた茎は、見た目が悪いばかりでなく、畳表を編む際に経(たて)糸に絡み、作業効率上も好ましくない。ほかに、香り、弾力性、病斑(びょうはん)などの有無が品質に関係する。
 栽培品種には伸長型と分げつ型、またそれらの中間型がある。伸長型は茎が長く太いが、分げつが少ないので収量が少ない。逆に分げつ型は、茎は短く細いが、分げつ数が多く多収で、また、着花数が比較的少ない利点がある。現在栽培されている主要品種は、中間型の岡山3号、分げつ型のあさなぎ、きよなみなどである。現在の主産地は熊本県で、全国の約9割を生産する。ほかに福岡、広島などが生産県である。[星川清親]

民俗

岡山県久米(くめ)郡の月の輪古墳からは、イグサ科らしい植物の茎を細糸で編んだもので包んだ鉄の鏃(やじり)が出土している。法隆寺や法輪寺の宝物にも縁どりをした茣蓙(ござ)がみられ、紫や緑、赤、黄色に染めたイグサが用いられている。往古の畳は、敷物として折り畳むことのできる薄縁(うすべり)(畳表に縁どりをしたもの)であった。江戸時代中期には、備後(びんご)ものの畳表が最高品質とされ、備中(びっちゅう)、備前(びぜん)、近江(おうみ)がこれに続いた。そしてイグサの芯(しん)でつくった灯芯を甲子(きのえね)の日に買えば、家が栄えるといわれた。倉敷市松島にある五座八幡(ござはちまん)は、神功(じんぐう)皇后に茣蓙を奉ったゆえの命名とされ、茣蓙発祥の地と伝えられる。かつては備中の藺(い)製品の中心で、この地方では盆(ぼに)茣蓙といって、盆仏を祀(まつ)る敷物として毎年新調する風があり、盆踊りや葬儀翌朝の墓参りには、イグサでつくった編笠(あみがさ)をかぶって頭を隠す。粽(ちまき)を巻くのに使われるほか、豆ほどの実をつけるので、七夕(たなばた)の短冊をつける紙縒(こより)の代用とされた。刈上げ祝いには、稲の場合と同様盛大な鎌(かま)祝いが行われる。[土井卓治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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