旧約聖書の〈預言者〉の冒頭に収められ,預言者イザヤの名を冠した最も大きな預言書。イザヤ以後,前2世紀までの長い期間に繰り返し加筆,編集され,また他の預言集と合体されて現在の形態をとる。今日の学者は全66章を,1~39章,40~55章,56~66章に大別し,それぞれ第1,第2,第3イザヤ(書)と呼ぶ。〈第1イザヤ〉は,預言者イザヤの真正な言葉を含む預言集や,成立年代の最も遅い黙示思想,36章以下の民間説話的なイザヤ伝などの多様な文書から成り,35章までは自国民への審判告知(1~12章),諸国民への審判告知(13~23章),救済預言(24~35章)の三部構成を示す。〈第2イザヤ〉は,バビロン捕囚末期に召命を受けた,名が伝えられていない預言者による,神のイスラエル解放に関する預言と弟子による補筆から成り,後代贖罪の死としてのイエスの死理解に影響を与えた〈苦難のしもべの歌〉を含む。〈第3イザヤ〉は,弟子たちによる捕囚帰還後の人々への激励と指示の預言である。
執筆者:並木 浩一
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『旧約聖書』の三大預言書の一つ。全体は大きく三つの部分に分かれ、第一部は1~39章、第二部は40~55章、第三部は56~66章。それぞれ第一イザヤ、第二イザヤ、第三イザヤとよばれることがある。第一イザヤは、紀元前8世紀の後半エルサレムで活動した預言者イザヤのことばを中心として編集されている。第二イザヤは、前539年ペルシアによって新バビロニア王国が倒され、ユダ王国の捕囚民がバビロンからユダに帰還を許される時期に書かれた。第二イザヤという無名の預言者が帰還の指導にあたって語ったことばが中心となっている。53章の「苦難の僕(しもべ)」の歌は、キリスト教ではメシア預言と解されている。第三イザヤは、第二イザヤの弟子が、帰還後の困難な時期に語った預言を集めたもので、前6世紀末に書かれたと思われる。
[木田献一]
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…原罪や〈最後の審判〉でさえ,預言者とそれに続く黙示思想家とによって,イスラエルの歴史と運命の問題として自覚されたのであって,けっして初めからあった抽象的な観念ではない。聖書の罪意識はまったく具体的・現実的なので,たとえば《イザヤ書》45章のように神は〈光をつくり,闇を創造する〉といった,ゾロアスター教の二元論すれすれのことがいわれ,《ヨハネによる福音書》のようにグノーシス的二元論をかかえこむことすらある。あるいは,イエスは病気癒(いや)しの奇跡を多く行ったが,これが罪の赦し(贖罪)と一つであって,およそご利益宗教的ではなかったことは,先に述べた罪の全体性からしてのみ理解されよう。…
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