改訂新版 世界大百科事典 「イミダゾール」の意味・わかりやすい解説
イミダゾール
imidazole
5員環複素環式化合物で,1,3-ジアゾール,グリオキサリンともいう。1858年にグリオキサールとアンモニアとの反応によって得られた。誘導体は1799年にすでに見いだされていた。結晶性のよい固体で,融点91℃,沸点257℃。塩基性で,塩基解離指数pKb=7.05(25℃)で,異性体のピラゾールより強く,酸と結晶性の塩をつくる。水,アルコール,エーテル,クロロホルムによく溶けるが,ベンゼン,石油エーテルに溶けにくい。ニトロ化,スルホン化,ハロゲン化などの芳香族求電子置換反応は環の4位で起こる。ただしジアゾカップリングは2位で起こる。α-アミノアルデヒドまたはα-アミノケトンの塩酸塩とチオシアン酸カリウム水溶液を加熱して得られた中間体をラネーニッケルまたは濃硝酸で酸化して合成される。天然に存在する誘導体には,ヒスチジン,ヒスタミン,ビタミンB12,ビオチンなどがあり,強力な生理作用をもつものが多い。医薬品合成原料とされる。
執筆者:松本 澄+内田 高峰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報