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イラン学 イランがくIranology; Īrānshināsī

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イラン学
イランがく
Iranology; Īrānshināsī

イラン文化の総合的認識を目的とする学問。イラン文化の特質を明らかにしようとする個々のイラン研究の総称としても用いられる。ビーシトゥーン (ベヒストゥーン) のダレイオス1世の磨崖碑文の解読,アベスタの比較研究,中央アジア出土文書の解読により,古期ペルシア語,中期ペルシア語の研究が進み,パミール方言を含むイラン文化圏内の諸方言調査と相まって,20世紀に入ってイラン学の言語学的基礎ができた。 2500年にわたるイラン史については,王朝,時代によって研究に精粗があるが,他民族による侵入,支配と政治的断絶にもかかわらず,イラン文化伝統の一貫性保持という認識が確立され,イラン高原のみならず,西アジア,インド,中央アジアの広域に残っているイラン文化の影響も確認されている。ペルシア文学はイラン人が最も誇りとする文化遺産であり,その研究はイラン学のなかで研究者層が最も厚く,個々の詩人,作品の研究から,体系的な文学史も書かれている。イラン思想の特色を明らかにするゾロアスター教マニ教,さらにイラン人がイスラム教史で果たしてきた役割,特にシーア派の問題は,宗教学,哲学,社会学の分野で取り扱われている。近年,パフラビー語の文献,碑文,出土文書によるササン朝期のゾロアスター教研究が推進されており,また 16~17世紀のシーア思想が見直されている。古来イラン人は独特の美の世界を創造してきた。各国美術館には貴重なイラン美術,工芸品が収蔵されている。さらにペルセポリスをはじめとする豊富な遺跡の考古学的研究もイラン学の一大分野であり,発掘調査,修理,保存が精力的に遂行されている。イランの美術,考古学の比較研究は,東西文化交流を含むユーラシア大陸文化の解明に寄与している。イラン文化の歴史性と普遍性はイラン本国のみならず,世界各国に多くのイラン文化愛好者,イラン学者を生んでいる。しかし一方で,膨大な数に上るペルシア語の文献のうちテキストが刊行されているものは主要なものの一部にかぎられ,訳されているものもわずかで,ほとんどが写本のままである。

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世界大百科事典 第2版の解説

イランがく【イラン学】

イラン学は,楔形文字の古代ペルシア語碑文,パフラビー文字の碑文とアベスター経典,ソグド語・サカ語・ホタン語の出土文書などの厳密な言語学的研究から始まった。ガイガーW.Geiger,クーンE.Kuhn共編の《イラン言語学概論》(1895‐1904)がその成果である。イラン言語学はパミール方言などイラン諸方言の調査,ペルシア語の文法書・辞典の整備を進展させるとともに,ゾロアスター教・マニ教の研究にも文献学的基礎を与え,ボイスM.Boyceの《ゾロアスター教史》(1975)を生み出すにいたっている。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

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