イラン美術(読み)イランびじゅつ(英語表記)Iranian art

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イラン美術」の意味・わかりやすい解説

イラン美術
イランびじゅつ
Iranian art

イラン高原を中心に発展したイラン (ペルシア) の美術。大きく6時期に区分される。 (1) 先史時代 前 8000~7000年頃からイラン高原では土器が作られ,前 4000年頃には初期定住農耕民により彩文土器が作られた。前2千年紀後半から騎馬遊牧民文化の性格を物語るルリスターン青銅器 (→ルリスターン美術 ) が出現した。 (2) アケメネス朝時代 (前 550~330)  ダレイオス大王によるペルシア統-は,壮大なオリエント王朝芸術を開花させた。ペルセポリスの大宮殿建築,力強い石の浮彫,豪華な黄金製品などが強大な王権を表現している。 (3) パルティア時代 (前3~後3世紀)  アレクサンドロス大王の東征以後,ギリシア的要素とイラン的要素が混在し,ハトラの遺跡には両者の融合がみられる。彫刻や絵画には,静的で安定感のある正面主義の表現が著しい。 (4) ササン朝時代 (224~651頃)  古代オリエント芸術の最後を飾る王朝美術が栄えた。多くの磨崖浮彫や金銀浮彫細工が王権を誇示している。建築では,クテシフォンの巨大なイーワーンにみられるようなアーチやドームが発達。ガラス工芸や金銀器には国際色豊かな東西交流が偲ばれる。 (5) 初期イスラム時代 (651~13世紀中頃のモンゴル侵入まで)  イランの伝統とイスラム美術が融合,発展した。セルジューク朝時代にはモスクマドラサなどの建築が様式的に発展。金属的光沢をもつラスター彩やミナイ彩など陶芸技法の発達がみられる。 (6) 後期イスラム時代 イラン・イスラム美術の爛熟期。チムール朝時代に開花したミニアチュールや建築のタイル・モザイク装飾は,サファビー朝時代になると,さらに優雅で繊細華麗なものへ発展した。イスファハンのマイダーネ・シャーは,完成されたイラン美術の美の極致を表現したものといえる。

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