ウイグル語(読み)ウイグルゴ(英語表記)Uyghur

デジタル大辞泉 「ウイグル語」の意味・読み・例文・類語

ウイグル‐ご【ウイグル語】

アルタイ諸語の一。ウイグル族の言語。主に中国新疆ウイグル自治区中心に話されている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ウイグル語」の意味・読み・例文・類語

ウイグル‐ご【ウイグル語】

〘名〙 古代チュルク語の一つ。ウイグル族が、一五、六世紀に仏教徒からイスラム教徒に改宗する以前に書き残した文献の使用言語。文献の多くはウイグル文字で書かれている。二〇世紀初頭、東トルキスタン敦煌からヨーロッパや日本の探検隊によって多数発見された。中国新疆ウイグル自治区を中心にウイグル族によって話されている言語もウイグル語と呼ばれることがあるが、言語学ではこれを区別して新ウイグル語と呼ぶ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ウイグル語」の意味・わかりやすい解説

ウイグル語 (ウイグルご)
Uyghur

(1)古代ウイグル語 突厥(とつくつ)語に次いで古い古代チュルク語(チュルク諸語)の一つ。東トルキスタンで活躍したウイグル族の言語。8世紀ないし15世紀の文書・碑文がある。仏教,マニ教,法律に関するものが多い。しかし,最も重要な文献はユヌフ・ハヌ・ハジブが1069-70年に作った《クダドグ・ビリク》と称する教訓詩である。ウイグル文字で書かれたものが多いが,ソグド文字,マニ文字で書かれたものもある。(2)現代ウイグル語 トルキスタンで現代ウイグル語といわれている言語。かつて〈東チュルク語〉などといわれたが,1921年からは公式に〈ウイグル語〉と呼ぶことになった。旧ソ連邦に属した中央アジアのウズベキスタンカザフスタンキルギスタン各共和国と中国の新疆ウイグル自治区で話されている。中国に100万以上の話し手がいる。現代チュルク語のなかではウズベク語に近い。新疆のウイグル語文語はチャガタイ文語(チャガタイ語)に近い。ウズベク語同様,チュルク諸語の特徴の一つである母音調和はくずれている。カシュガルのある方言では,動詞語尾は母音調和するが,名詞語尾はそうでない。正書法は,旧ソ連地域のウイグル語はローマ字ラテン文字)。新疆のウイグル語はアラビア文字。ただし,後者では76年以降中国語表記のローマ字による文献も生まれつつある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウイグル語」の意味・わかりやすい解説

ウイグル語
ういぐるご
Uighur
Uyghur

トルコ系諸言語の一つ。古代、中世のウイグル語と区別するために新ウイグル語ともよばれる。現代ウイグル語は、中国の新疆(しんきょう/シンチヤン)ウイグル自治区で約720万人(1990)、カザフスタン共和国などで約24万人(1986)が使用している。トルコ語族のうちウズベク語とともに東方語派を形づくる。新疆ウイグル自治区では、カシュガル、トゥルファンなどの中央方言を土台にした正書法が採用されている。文法構造や語順は、öy(家)、öyniŋ(家の)、öyni(家を)、öyge(家へ)、öyde(家で)、öydin(家から)のように、日本語とよく似ている。長い間アラビア・ペルシア文字を用いて表記されていたが、中国では1930年ラテン化字母が制定され、途中アラビア字の改訂を挟み、76年以後は漢語拼音(ぴんいん)字母による正書法が行われていた。しかし、1982年からアラビア・ペルシア文字の正書法が復活している。カザフスタンではソ連時代の1930~46年にラテン化が進められ、のちキリル字母を採用している。

[竹内和夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ウイグル語」の意味・わかりやすい解説

ウイグル語【ウイグルご】

チュルク諸語に属し,古代ウイグル語と現代ウイグル語とがあるが,前者と後者は直系の関係にはない。前者は10世紀から13世紀,西トルキスタン地方のカラ・ハーン王朝に最も栄えた言語で,主としてウイグル文字による文献を残した。後者はウズベキスタン,カザフスタン,キルギスタンから中国西部の新疆ウイグル自治区にかけて住むウイグル族の言語で,旧ソ連内ではロシア文字による正書法が,中国領内ではアラビア文字による正書法が行われている。話し手の数は,約600万人。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウイグル語」の意味・わかりやすい解説

ウイグル語
ウイグルご
Uighur language

(1) 中国新疆とウズベキスタンを中心に用いられている言語。新ウイグル語ともいい,古くロシアではタランチ語とも呼ばれた。話し手は 570万人以上。チュルク語の一つで,ウズベク語とともに,その南東方言 (チャガタイ方言ともウイグル方言とも,またウズベク方言ともいう) を形成する。サラール語やサリグ=ウイグル語の文字言語としても使われている。アラビア文字を用いていたが,旧ソ連では 1930年にローマ字に,47年からはロシア文字に替えられた。中国ではそのままアラビア文字を用い続けている。 (2) 古ウイグル語の意味で,9世紀から 14世紀にかけて用いられたウイグル文語をさす。ウイグル文字,ネストリアン=シリア文字,アラビア文字で書かれた文献が残されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウイグル語の言及

【ウイグル族】より

…はじめモンゴル高原,のちトルキスタン方面に移住したトルコ系民族のひとつ。回紇,維吾爾とも記される。現在は中国の新疆ウイグル自治区と旧ソ連邦中央アジアを主たる居住地とし,人口は中国に約720万(1990),旧ソ連邦内に約21万(1979)。クトゥルク・ビルゲ・キョル・カガン(懐仁可汗)が744年にユチュケン山麓に拠って(在位747年まで)から840年までモンゴル高原に他のトルコ系部族との連合体による遊牧国家を出現させた。…

※「ウイグル語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android