改訂新版 世界大百科事典 「ウミガラス」の意味・わかりやすい解説
ウミガラス (海烏)
guillmot
common murre
Uria aalge
くちばしが比較的長い大型のチドリ目ウミスズメ科の鳥。オロロンチョウとも呼ばれる。アイスランド,イギリス,スカンジナビア半島,スペイン北部沿岸,朝鮮半島北部,北海道,オホーツク海沿岸,ベーリング海沿岸,北アメリカ西部沿岸,ラブラドル半島周辺などで繁殖し,冬はやや南へ移動する。日本では北海道の島で繁殖し,冬は東北地方の海上にいる。全長約43.5cm,ウミスズメ科の鳥としてはくちばしは長めで先がとがり,くびも長い。夏羽では頭部と体の上面と翼はくすんだ黒褐色で次列風切の先は白い。胸から腹は白色。冬羽ではのど,くび,ほおは白くなり,眼の後方に1本の黒線がある。夏には繁殖地付近の海上に群れで生活し,潜っては魚やイカをあさり,海上を縦に1列になって飛ぶ。島の岩棚に集団で繁殖し,岩の上に1腹1卵を産む。卵はヨウナシ形で色彩には変異が多い。抱卵日数は32~33日。かえった雛は綿羽に覆われ,2~3週間親鳥の保育を受けてから落下するように海に飛びおり,その後は海上で親に保育されて成長する。繁殖期には岩の上に並んでとまりウルルーン,またはオロローンとよくひびく声で鳴き合う。
オオウミガラスPinguinus impennis(英名great auk)はかつて北大西洋に多産した全長75cmもある大きな種で,くちばしは左右に平たく,体の上面は黒くて眼の前に白い線がある。翼が退化し,飛翔(ひしよう)力はなく,油をとるため漁船員に乱獲され,1844年ころに絶滅した。
執筆者:高野 伸二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報