コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

ウラン濃縮 ウランのうしゅくuranium enrichment

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ウラン濃縮
ウランのうしゅく
uranium enrichment

天然に存在するウランは,ウラン 238238U (存在百分率 99.27%) ,ウラン 235235U (0.72%) および微量のウラン 234234U (0.006%) という同位体の混合物である。このうち,核分裂を起こすのはウラン 235だけであるため,ウランを核燃料として使用できるようにするには,ウラン 235の濃度を必要に応じた濃度にまで高めなければならない。ウラン元素の同位体はそれぞれわずかな質量の違いはあるが,化学的特性は同一なので,化学的な方法では分離しにくい。そこで同位体間の質量の差を利用して分離するいろいろな方法が開発されている。代表的なものとしては,運動速度の差を使うガス拡散法ノズル分離法質量差を直接使う遠心分離法,電磁法,電子エネルギー順位の違いを使うレーザー法,反応速度差を使うイオン法,光化学的分離法などがある。現在,大規模工業化では,ガス拡散法,遠心分離法によるプラントが中心である。最近ではレーザー法などの開発研究も本格化しつつある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ウラン濃縮

天然のウランには、核分裂を起こすウラン235が約0.7%しか含まれておらず、わずかに質量が大きいウラン238が残りを占める。原子炉の燃料として使うには235を3〜5%まで増やす必要がある。高速回転すると遠心力によって内側に軽いものが集まる原理を利用し、ガス化した上で遠心分離器で徐々に濃縮する方法が主流。核兵器用には通常、濃縮度を90%以上にまで高める。

(2007-07-01 朝日新聞 朝刊 2総合)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ウランのうしゅく【ウラン濃縮 uranium enrichment】

天然に存在するウランUは,質量数の異なるウランの同位体235Uと238Uとの混合物であり,そのうち熱中性子と反応して核分裂を起こしエネルギーを発生することができるのは,ウラン中にわずか0.7%ほどしか含まれていない235Uである。そこで,ウランを種々のタイプの原子炉の燃料や原子爆弾の製造に使用するために,ウラン中の235Uの濃度を必要に応じた濃度にまで高める操作をウラン濃縮と呼ぶ。したがって,ウラン濃縮はウラン元素についての同位体分離操作であるともいえる。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ウラン濃縮
うらんのうしゅく

ウラン235は天然ウラン中にわずか0.72%しか含まれていない同位体であるが、その存在比を人工的に大きくする操作がウラン濃縮uranium enrichmentで、その操作の結果得られるものが濃縮ウランである。濃縮ウランは、原子力発電や核兵器の燃料として用いられる。
 第二次世界大戦中のマンハッタン計画(原爆製造計画)でアメリカは、当時知られていたあらゆる同位体の分離法を試みた。それは、核分裂性核種であるウラン235を分離濃縮できさえすれば、容易に高性能の爆弾をつくれる見通しがあったからである。図Aは、ウラン235の濃縮度と核爆発をおこすのに必要な最小限の質量(臨界質量)との関係を示すもので、これから濃縮度30%以下では実際上、核爆弾材料にはできないことがわかる。平和利用を目的とした濃縮ウランの輸出に際して、核不拡散を目的として濃縮度が通常20%以下に制限されるのはこの理由による。[中島篤之助・舘野 淳]

濃縮ウランの製造方法(ウラン濃縮法)

各種のウラン濃縮法(ウラン濃縮技術)については、それぞれ後述するが、歴史的にもっとも重要であったのは「ガス拡散法」である。先にも述べたマンハッタン計画により、アメリカは第二次世界大戦中およびその直後にガス拡散法に基づく三つの巨大な濃縮工場を、23億ドルの巨費を投じて建設した。その能力合計は1万7200トン分離作業単位に達し、1970年ごろまでは資本主義圏全生産量の95%を占めていた。このことが、同じ核分裂を利用する原子力発電において軽水炉が世界の原子炉市場を制覇するに至った理由である。ソ連(現、ロシア)、イギリス、中国、フランスもガス拡散法の工場を建設、運転していたが、これらの国々は「遠心分離法」に転換しつつある(図B)。なお「遠心分離法」は、日本でも行われている。日本原燃(株)は、かつて動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の人形峠事業所(のちの核燃料サイクル開発機構、現在の日本原子力研究開発機構・人形峠環境技術センター)が研究開発した遠心分離法によるウラン濃縮の技術成果を基にして、1992年(平成4)より青森県六ヶ所村で商業用プラントの操業を行っている。この方法は比較的小規模な工場で高濃縮ウランをつくることができるので、核拡散に直結した「センシティブ(機微)な技術」とよばれる。
 そのほかに研究開発段階のもので「レーザー法」「化学交換法」などがある。このうち「化学交換法」は旭化成(株)の日向(ひゅうが)工場のパイロット・プラントで、世界に先駆けて成功したが、現在は研究が中止されており、実用化はされていない。[中島篤之助・舘野 淳]

各種のウラン濃縮法の比較

現在、実用および研究開発中のおもなウラン濃縮法を以下に示す。
(1)ガス拡散法 気体状化合物としては六フッ化ウラン(UF6ガス)を用い、分子の拡散速度の差を利用する濃縮法。特殊な隔膜を通して気体を拡散させると、気体分子の質量の比の平方根に比例して同位体の分離が行われることを利用する。設備に可動部が少ないため、構造が単純で容量の拡大が容易なことから、大容量の処理に適しているが、カスケード(拡散筒の集合体)1段当りの分離係数が小さく、電力消費量が大きいなどの難点がある。現在実用化されている。
(2)遠心分離法 UF6ガスを用い、縦形円筒を高速で回転させると、遠心力の作用で、質量数の大きいウラン238は外側に、ウラン235は内側に集まりやすいことを利用する。ガス拡散法に比べて分離係数はずっと大きく、電力消費量も10分の1程度になる。規模も小さく経済性に優れているが、機構的に複雑で高度な産業技術が必要とされる。周速の大きい長胴型の高性能遠心機をいかに安価で量産するかが、この方法の成功の鍵(かぎ)である。軽量で強靭(きょうじん)な材料としてチタン系合金が用いられるが、高速回転を可能にする「軸受」の開発が技術の鍵をにぎっている。現在実用化されている。
(3)化学交換法 4価ウランと6価ウランの交換反応を利用する。イオン交換樹脂で多重化。利点としては、可動部が少なく、プラントの小型化、エネルギー消費量の低減化が可能である。しかし、定常達成時間が長い。日本、フランスで研究開発が進められ、日本は成功している。
(4)原子レーザー法 金属ウランを蒸気化し、スペクトルの同位体シフトを利用してウラン235のみをレーザー光でイオン化して分離する。分離係数がきわめて大きく、建設費大幅低減の可能性がある。しかし、大出力レーザーの開発が必要で、ウラン金属の高温での取り扱いが困難である。
(5)分子レーザー法 超音速ノズルで冷却されたUF6ガスにレーザー光を照射し、ウラン235のみを紛体のUF5ガスにして捕集する方法。分離係数が大きく、建設費大幅低減の可能性がある。ただし、高繰り返しレーザーの開発が必要。[中島篤之助・舘野 淳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のウラン濃縮の言及

【核燃料サイクル】より

…軽水炉では中性子が減速材である軽水に吸収されむだに消費される割合が高いため,中性子の発生割合を高めておく必要があり,235Uの比率が2~3%の濃縮ウランを用いる。この場合,ウランを原子炉の中に入れる前の段階で,天然ウランを濃縮ウランに変えるウラン濃縮という過程が核燃料サイクル上必要になってくる。中性子の利用効率がよければ,天然ウランを直接利用することも可能である。…

※「ウラン濃縮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

ウラン濃縮の関連キーワード六ケ所村の核燃事業許可取り消し行政訴訟ブラジル=西ドイツ原子力協定マンハッタン計画国立歴史公園六ヶ所村核燃料サイクル施設ヨーロッパウラン濃縮機構動力炉・核燃料開発事業団人形峠環境技術センター核燃料サイクル関連施設青森県上北郡六ヶ所村核疑惑(イランの)イランの核開発問題核燃料サイクル施設アフマディネジャド南北非核化共同宣言イラク国連核査察イラン核開発問題包括的見返り案六フッ化ウランウラン加工施設イランの核問題

今日のキーワード

隗より始めよ

《中国の戦国時代、郭隗(かくかい)が燕(えん)の昭王に賢者の求め方を問われて、賢者を招きたければ、まず凡庸な私を重く用いよ、そうすれば自分よりすぐれた人物が自然に集まってくる、と答えたという「戦国策」...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

ウラン濃縮の関連情報