日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウワバミソウ」の意味・わかりやすい解説
ウワバミソウ
うわばみそう / 蟒蛇草
[学] Elatostema involucratum Franch. et Sav.
Elatostema umbellatum Blume var. majus Maxim.
イラクサ科(APG分類:イラクサ科)の多年草。根茎が盛んに分枝して繁殖するために茎は群生する。茎は高さ20~50センチメートルだが、栽培されるものではときにそれ以上に達する。多汁質で紫褐色を帯び、無毛。葉は茎の上部に2列に互生し、柄(え)はなく、ゆがんだ長楕円(ちょうだえん)形または長卵形で、長さ3~15センチメートル。先は鋭くとがり、基部は片側だけがやや耳状となる。縁(へり)には多数の鋸歯(きょし)があり、上面にはまばらに毛があって光沢がある。花序は葉腋(ようえき)から出て雌雄の別があるが、雄花序が先に出て、それが終わったあとでより基部側の葉腋にある雌花序が開くため、同じ茎では雌雄の花序は同時には見られない。雄花序には長い柄があって密な集散状、雌花序は無柄で頭状。夏から秋にかけて、茎の節(ふし)のすぐ上の部分が紫褐色になって肥大し、むかご状の器官となって、ついには節からばらばらになって地面に落ち、これらが発芽して新苗となる特徴をもつ。日本全土の山地の谷筋の湿った場所に生育するが西日本では少ない。国外では中国中部に分布し、中国名は樓梯草という。ミズまたはミズナの名で若い茎を食用とし、そのために栽培されることもある。一部の地域では秋に生じる茎の節部のむかご状の器官を佃煮(つくだに)などにして食用にすることもある。中国では薬用に使われる。
ヒメウワバミソウ(姫蟒蛇草)E. japonicum Wedd.(E. umbellatum Blume)はウワバミソウと基本的特徴が一致し、同一種内の変種関係に扱われることもあるが、全体に小形で葉の鋸歯が少なく、花序当りの花数も少なく果実の色が異なるので区別される。関東地方から九州のおもに太平洋側の地域にウワバミソウと入れ替わるように生育し、国外では朝鮮半島南部に分布する。ウワバミソウ属は300種以上を含むイラクサ科最大の属でとくに熱帯アジアに多くの種が分化しており、日本にも10種が自生しているが、なかには産地が極限されていて絶滅が危惧(きぐ)されるもの(奄美(あまみ)大島固有のアマミサンショウソウや与那国(よなぐに)島固有のヨナクニトキホコリなど)や、すでに日本からは絶滅したと考えられる種(ホソバノキミズ)もある。
[米倉浩司 2019年12月13日]