エゼキエル(その他表記)Ezekiel

翻訳|Ezekiel

デジタル大辞泉 「エゼキエル」の意味・読み・例文・類語

エゼキエル(Ezekiel)

[?~前571ころ]イスラエル預言者ユダヤの民の堕落を指摘して、エルサレム陥落預言。陥落後はイスラエルの救済新生を説いて同胞を激励した。その預言を集めたものが、旧約聖書の「エゼキエル書」といわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「エゼキエル」の意味・読み・例文・類語

エゼキエル

  1. ( Ezekiel ) 紀元前六世紀ごろ、バビロニアで活動したイスラエルの預言者。パレスチナ以外の地で活躍した最初の預言者という。

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改訂新版 世界大百科事典 「エゼキエル」の意味・わかりやすい解説

エゼキエル
Ezekiel

ユダ王国末期の預言者。父の名はブジ,元来エルサレムの祭司の一員であった。前597年の第1回バビロン捕囚によって,ユダの王エホヤキンなどとともにバビロンへ移された。前593年幻を見て,預言者となり,ユダ王国とその都エルサレム,とくにその神殿が,神に対して犯した罪のゆえに滅ぼされることを預言した。彼の初期の預言は,神の審判とその理由を述べることを中心としている。しかし前587年エルサレムが占領され,翌年には神殿が破壊され炎上したということが伝えられると,エルサレムとユダ王国の回復と再建のための預言活動を始めた。彼らの将来はすべて,各人の新しい決断にかかっているとして,集団責任論や先祖の罪が子孫に報いるという応報観を否定した。いかなる罪人も新しく神の掟を行う決意をすれば救われるとし,預言者はこのような決意をするよう警告し,決意の実行を〈見守る者〉であるとしている。民族復興を枯れ骨の復活の幻で示し(《エゼキエル書》37章),理想の王が与えられることを預言し(同34章),また前573年の日付のあるエルサレム神殿再建の幻(同40~48章)において,再建されたエルサレムを中心とする理想的イスラエルの未来図を描いている。敗戦と捕囚という過酷な運命を越えてユダヤ人に再建の幻と勇気を与えた預言者として,エゼキエルは〈ユダヤ教の父〉と呼ばれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エゼキエル」の意味・わかりやすい解説

エゼキエル
えぜきえる
Ezekiel

生没年不詳。『旧約聖書』の預言者の一人。紀元前597年、新バビロニア王国によってユダヤ人の第1回捕囚とともにバビロンに移された。捕囚の第5年目に、捕らわれの同胞の指導にあたるため、彼は神の啓示を受けて預言者となった。前587年新バビロニア王国によってユダ王国の都エルサレムが破壊されるまで、彼はエルサレムとユダに対する審判の預言を語り続けた。しかしエルサレム陥落の報を受けると、失意の民を慰めるため、神の恵みと民族復興の預言を語り始めた。その際彼がとくに強調したことは、ユダヤ民族の将来はすべて各人の決断にかかっているということであった。もと祭司であった彼は神殿の再建にも情熱をもっていた。

[木田献一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エゼキエル」の意味・わかりやすい解説

エゼキエル
Ezekiel

旧約聖書中バビロニア捕囚時代の預言者。ヘブライ語で「神が強める」の意。祭司ブジの子。前 597年にバビロン捕囚に送られたが,その5年目に神の召命を受け預言活動を始めたとされる。その活動は約 20年以上にわたったと考えられ,その間故国イスラエルの運命をさまざまな比喩や象徴をもって預言した。同時に神の慈悲としての古い契約に代る永遠の契約について語り,また内面的な回心の必要を明らかにしている。エゼキエルの豊かな想像力は,その多くの比喩的な表現にみられる。たとえばやがては生命を得,新しきイスラエルとなる乾いた骨の堆積した谷のことを幻想的に語っている (エゼキエル書 37章) 。また彼は神を敬うことの深い意義について,神の名の神聖さについて,熱心に教えを広めた。きわめて霊感に満ちた預言者であり,その思想は一貫してメシア預言であった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「エゼキエル」の解説

エゼキエル
Ezekiel

イスラエルの預言者。前597年,第1回バビロン捕囚バビロニアに移され,さまざまな象徴と比喩を用いて祖国の滅亡を警告し,国民の悔改を説いた。その努力空しく,前587ないし前586年イェルサレムは陥落したが,これを転機として,敗戦と亡国に打ちひしがれた同胞を慰め励ます預言を述べた。さらに律法の遵守と理想的な神殿礼拝にイスラエル民族新生の姿を見出し,ユダヤ教の先駆となった。彼の預言を収録したのが旧約聖書中の「エゼキエル書」である。

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旺文社世界史事典 三訂版 「エゼキエル」の解説

エゼキエル
Jeḥezkēl

生没年不詳
前6世紀に活躍したユダ王国の預言者
第1回バビロン捕囚にあったが,そこでヤハウェ信仰を強く説き,ユダヤ民族の復興を預言した。イザヤ・エレミア・ダニエルとともに,ユダ王国の四大預言者と呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内のエゼキエルの言及

【カバラ】より

…最古のカバラは〈神の玉座もしくは戦車(メルカーバー)〉として知られている。これは《エゼキエル書》におけるエゼキエルの幻視を追体験することによって,霊界参入を果たそうとする神秘主義である。後3世紀から6世紀の間に《セーフェル・イェツィーラー(形成の書)》という最も重要なカバラ文献が成立する。…

【狂気】より

…古代社会で狂気の人が神の声を伝え,民衆を導く仲介者の役割を果たしたとされるのもその一例である。例えば前600年ごろのヘブライの預言者エゼキエルは,各種の幻覚,千里眼的透視,昏迷の発作などからヤスパースにより精神分裂病と断定されたが,これは後世の医学的判断にすぎないもので,当時の彼はユダヤの民に警告や希望をあたえる偉大な指導者だった。同様の事情はイエスの場合にも認められ,フランスの精神科医ビネ・サングレC.Binet‐Sangléによるパラノイア(妄想症)をはじめ,さまざまな診断が下されているが,この種の医学的診断に対して,みずからも医師だったA.シュワイツァーは主として神学史の立場から厳しい反論を展開した。…

【キリスト教】より

…その始まりは弟子たちの復活信仰の成立と同時である。これがガリラヤで(《マタイによる福音書》),またエルサレムで(《ルカによる福音書》)幻のうちに示されたことは,たしかにそれぞれの福音書の編集意図の相違を示すにちがいないが,事柄としていえば,預言者エゼキエルがバビロンとエルサレムとで同時に幻を見,預言したという二重性と同様であり,また《ダニエル書》のような黙示文学に見られる事後預言の重ね合せと同様である。これによって,二つの異なる場所での運動が歴史的には一つの預言とその成就のなかで見られることになる。…

【預言者】より

…アモスに続くホセア,イザヤ,エレミヤなどの前8~前7世紀の預言者の活動の中心をわれわれはその点に見たい。王国の滅亡後に活動したエゼキエルや第2イザヤといわれる預言者(《イザヤ書》40~55)では預言の性格はかなり変わり,前者には祭司的要素が強く,後者には文筆家の面が強い。【関根 正雄】。…

※「エゼキエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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