酸化エチレンともいう。上に示すような構造式をもった環状エーテルで,アセトアルデヒドと互いに異性体の関係にある。1859年にフランスのウルツA.Wurtzによって発見され,1952年にアメリカのユニオン・カーバイド社によって最初に工業生産された,有機合成化学工業上重要な中間体である。沸点は10.73℃で,沸点以下では芳香をもつ無色の液体。気体は3~100容量%の爆発範囲をもち,空気と混合しなくても熱や衝撃によって分解爆発を起こすが,液体では分解爆発は起こさない。
古くは,エチレンに塩素と水を作用させてエチレンクロルヒドリンを得,これを石灰乳(水酸化カルシウム)と反応させて製造した。しかし現在では,エチレンを銀触媒上で空気または酸素によって部分酸化して製造されている。この場合,エチレンの完全酸化(燃焼)反応が避けがたく,エチレンオキシドの収率は65~70%である。
穀物の害虫駆除剤や殺菌剤などとしての直接的な用途もあるが,大部分はそのオキシラン環の高い反応性を利用して次のような化合物の合成反応に用いられる。
(1)エチレングリコールの製造。高温・高圧下で水と反応させる。
(2)エタノールアミンの製造。20~30%のアンモニア水と加熱すると,モノエタノールアミンHOCH2CH2NH2,ジエタノールアミン(HOCH2CH2)2NH,トリエタノールアミン(HOCH2CH2)3Nなどが得られる。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
環内に酸素原子一つを含む3員環複素環式化合物で、エポキシドの一種である。環状エーテルの一種であるが、3員環が大きなひずみをもっているので開環反応をおこしやすい。酸化エチレン、オキシランともよばれる。
エチレンクロロヒドリンと水酸化アルカリとの反応により生成する。この反応は、1859年にフランスのC・A・ウュルツにより最初に行われた反応で、エチレンオキシドの実験室的製法として知られている。
1937年に銀触媒上でエチレンを空気または酸素で直接酸化する方法が開発され、工業的にはこの方法により製造されることが多い。無色の液体または気体で、快いにおいをもち、揮発性が非常に大きい。水、エタノール(エチルアルコール)、エーテルによく溶ける。可燃性で、空気との混合気体は爆発範囲が広く危険である。水と反応させると3員環が開環して鎖式のエチレングリコールになり、水酸化アルカリを触媒として重合させるとポリエチレングリコールになる。安価で反応性に富むので合成原料として有用で、エチレングリコール、界面活性剤、エタノールアミン、ポリエチレングリコールなどの原料としての用途をもつ。
[廣田 穰]
エチレンオキシド
分子式 C2H4O
分子量 44.1
融点 -112℃
沸点 10.73℃
比重 0.896(測定温度0℃)
屈折率 (n)1.361
C2H4O(44.05).酸化エチレン,オキシラン(oxirane)ともいう.工業的には,エテンをα-アルミナに銀とアルカリ金属を担持した触媒により,直接気相酸化して得られる.実験室的には,エチレンクロロヒドリンをアルカリと反応させて合成する.快香があり,沸点以下では無色の液体.融点-111.3 ℃,沸点12.5 ℃.水と自由に混合し,エタノール,エーテルに易溶.水和してエチレングリコールを生成し,水酸化アルカリ,塩化鉄(Ⅲ)などによって重合し,ポリエチレングリコールを生成する.種々の有機化合物の合成原料として用いられ,エチレングリコールとしてポリエステル原料,ポリエチレングリコールとして洗剤原料,化粧品基剤,繊維処理剤,合成樹脂原料,殺菌剤などに用いられる.[CAS 75-21-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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[用途]
1981年における日本のエチレン需要は約370万tであり,そのうちの約46%はポリエチレン製造用(高圧法ポリエチレン用が第1位で約28%を占め,さらに低・中圧法ポリエチレンが約18%)である。これに続いて塩化ビニル,アセトアルデヒド,エチレンオキシド,エチレングリコール,スチレンなどが重要な合成化学的用途である(95年のエチレン生産量は約700万t)。エチレンからの主要な誘導体は図1に示すとおりである。…
※「エチレンオキシド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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