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エピクロス Epikouros

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

エピクロス
Epikouros

[生]前341. サモス島
[没]前270. アテネ
ギリシアの哲学者。前 311年頃ミュティレネに学派を創始,306年にはアテネ郊外の庭園に移った。そこで彼の学派は庭園学派と呼ばれる。デモクリトスの原子論を根底にもち,霊魂をも物体とする唯物論者であり,感覚を知識の唯一の源泉かつ善悪の標識とする。そこから有名な快楽主義が生れる。しかし,その快はわずらいを伴うものであってはならないから,享楽であるより苦しみのない心の平静でなくてはならない。そこで彼は来世を否定して死に対する恐怖を断ち,神々を恐れる迷信を乗越えてみずから神々の平静さにあずかろうとした。この努力により彼は魂の救済者との名声を得,その範例的生ゆえに人々の尊敬を集めた (→エピクロス主義 ) 。

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百科事典マイペディアの解説

エピクロス

ギリシアの哲学者。サモス島生れ。前307年ころアテナイへ出て学園を開き,のちにその学園は〈エピクロスの園〉,その学徒はエピクロス学派(英語でエピキュリアン)と呼ばれることになる。
→関連項目ガッサンディルクレティウス

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とっさの日本語便利帳の解説

エピクロス

エピクロス(Epicurus。前三四一~前二七〇)▼ヘレニズム時代のギリシャの哲学者。エピクロス学派を開き、その学説はエピクロス主義(Epicureanism)と呼ばれる。すべての知識の根拠は感性的知覚であると考え、徳を養い、実践することによって得られる精神的な快楽を追求した。その快楽とは、苦痛や心配から解放された心の平穏としての幸福だったが、快楽を人生の最高善と説いたことが誤解され、一六世紀には彼にちなんで「美食家(epicure)」や「食道楽(epicurism)」という語が生まれた。そのため「epicurean」は今日、エピクロス学派の哲学者ばかりでなく、「快楽主義者」「美食家」をも意味する。

エピクロス

死は、もろもろの悪いもののうちで最も恐ろしいものとされているが、実はわれわれにとって何ものでもないのである。なぜかといえば、われわれが存するかぎり、死は現に存せず、死が現に存する時には、もはやわれわれは存しないからである。\エピクロス
ギリシャの哲学者(前三四二頃~二七〇)。

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世界大百科事典 第2版の解説

エピクロス【Epikouros】

前341ころ‐前270ころ
原子論と快楽主義で有名な古代ギリシアの哲学者。サモス島の生れ。前307年ころ,父の故郷であるアテナイに庭園つきの家をもとめ,そこに学園を創設した。その庭は後に〈エピクロスの花園〉と呼ばれ,彼自身は〈花園の哲学者〉と呼ばれることになる。大著《自然について》は散逸してしまったが,3通の書簡と個条書き風の《主要教説》,その他の断片が現存している。彼はデモクリトスの説を継承して原子論の立場に立った。自然界の事物は原子から構成されている合成物であるが,合成物の表面からは絶えず〈エイドラeidōla〉が流出している。

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大辞林 第三版の解説

エピクロス【Epikouros】

前341~前271) 古代ギリシャの哲学者。デモクリトスの原子論を継承し、それに基づく実践的哲学論、快楽説を提唱。人生の目的は死の恐怖を克服して魂の平安(アタラクシア)を求めることにあるとする。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

エピクロス
えぴくろす
Epikouros
(前342/341―前271/270)

古代ギリシアの哲学者。サモス島に生まれる。35歳ごろアテネに学園を開く。その学園は「エピクロスの園」とよばれ、婦女子や奴隷にも門戸を開放した。主著はすべて散逸、わずかに『主要教説』と3通の手紙を残すのみ。若くしてデモクリトスの原子論とその倫理思想を学び、これが彼の思想の基本的骨格を形成する。
 エピクロスは、欲望や激情から生ずる惑乱、死の不安、神々の処罰という迷信から人間を解放しようとする。哲学の目的は、この解放によってアタラクシアー(心の平安)を得ることにあり、その基礎をなすものが自然学である。すなわち、真の実在はアトマ(原子)とケノン(空虚)の二つで、前者は不壊(ふえ)の究極的実体、後者は原子が運動する場所である。原子の根源的運動は上から下への落下運動であるが、この際原子にパレンクリシス(不定の彷徨(ほうこう))がおこり、これによって原子相互間の衝突が生起し、世界が生成する。それゆえ、世界にあるすべてのものは、物体も神々も人間の霊魂も、原子の結合物にすぎない。当然、認識も物体の放射する原子とわれわれの魂を構成する原子との接触にほかならない。
 したがって、死とは魂をも含めて人間を構成する原子結合体の分解散逸であるから、死と同時にあらゆる認識が消滅する。神々は人間と同質の存在で、人間に関心をもたない。快楽の生とは平安の生であり、これは、過度の欲望や激情から解放されること、公共生活を避け隠れて生きること、パンと水の生活に満足すること、そして友情を尊重することにより、実現されるものであった。[岩田靖夫]

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世界大百科事典内のエピクロスの言及

【快楽主義】より

…ただしこの快楽とは肉体的放縦の所産ではなく,逆に魂による肉体的欲望の統御から生まれると考えた。この態度は次代のエピクロス学派に続く。エピクロスとその学派は魂の平静(アタラクシアataraxia)を重んじ,健康で質素な共同生活を通して得られる精神的快楽を重んじた。…

【人間機械論】より

…人間を一種の機械として考えようとする思想。古くはギリシアの哲学者エピクロスにさかのぼることができる。彼は万物は人間の身体はもちろん,魂をも含めて,いっさい,原子とその運動に由来すると考えた。…

※「エピクロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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