翻訳|Elijah
前9世紀の半ばに登場した古代イスラエル民族の預言者。オムリ王朝を築いたオムリは,サマリアを都とし,フェニキアと同盟し,その子アハブの王妃として,シドンから王妃イゼベルJezebelをめとらせた。イゼベルはフェニキアの主神バアルをイスラエルに導入し,ヤハウェ宗教を迫害した。エリヤはバアル宗教の預言者たちをカルメル山上に集め,ただ一人彼らと対決し,イスラエルではヤハウェのみが神であることを示した。またアハブがイゼベルの助けを借りて,農夫ナボテのブドウ園を奪ったとき,オムリ王朝に対する神の審判を宣告した。エリヤは英雄的預言者として,火の馬車に乗って天に昇ったとされ,終末のとき,メシアの先駆者として再来すると信じられるようになった。伝記的記事は旧約聖書の《列王紀》上17~19章,21章,同下1~2章のほか,《マラキ書》4章5節,《マタイによる福音書》17章11節を参照。
執筆者:木田 献一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
紀元前9世紀の中ごろ、イスラエルに登場した戦闘的な預言者。『旧約聖書』の「列王記」上(17~19章、21章)、同下(1~2章)にその言行が記されている。当時の北イスラエル王国の王アハブ(在位前870ころ~前850ころ)は、フェニキアから迎えた妻イゼベルのためにイスラエル古来の宗教を圧迫し、フェニキアの神バールの宗教を導入した。エリヤはこれに抵抗し、イスラエルとフェニキアの国境に位置するカルメル山上でバールを奉じる預言者たちと対決、イスラエルではヤーウェが唯一の神であることを示した。
[木田献一]
…だが職業的預言者と旧約聖書が多くのページを割いている古典的な預言者との間の区別も必ずしも明確につけがたい。 前9世紀に北王国イスラエルで活動したエリヤ,エリシャのような預言者をわれわれは〈行動の預言者〉として,前8世紀以後の〈言葉の預言者〉から区別する。隣国アラムの圧迫のためにフェニキアと結んで異教を導入したオムリの王朝を倒したエリヤ,エリシャが革命的な行動によって預言活動をなしえたのは,イスラエルが上層・下層の鋭い社会的対立によって国内的に分裂していたからである。…
※「エリヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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