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カイガラムシ カイガラムシCoccoidea; scale insect

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

カイガラムシ
Coccoidea; scale insect

半翅目同翅亜目カイガラムシ上科に属する昆虫の総称。分類学的にはアブラムシコナジラミキジラミなどの各上科に近い。すべて植物に寄生し,栽培植物に大害を与えるものが多い。雌雄異形で,雌では翅がなく,普通肢もなく,触角はないかまたは 11節。成虫になると宿主植物に固着して移動できなくなり,その形が貝殻を伏せたようにみえるのでこの名がある。殻がろう質の分泌物でおおわれているものもある。雄は軟弱で,前翅のみ発達するが翅脈はほとんどなく,後翅は痕跡的。触角は 10~25節から成る。ワラジカイガラムシ,タマカイガラムシ,コナカイガラムシ,カタカイガラムシ,マルカイガラムシなどの諸科が含まれる。ルビーロウカイガラムシ Ceroplastes rubens (カタカイガラムシ科) は,雌は紅色ないしあずき色の直径3~4mmの貝殻をもち,中央が隆起する。腹面から背面に向って4本の紐状白色分泌物を出す。雄は体長 1mm,暗紅色で,前翅は白色半透明である。柑橘類はじめ多くの植物の害虫として知られる。ワタフキカイガラムシ Icerya purchasi (ワラジカイガラムシ科) は,雌は直径 5mm,亀甲状楕円形で背面が強くふくらみ,黄白色のろう物質に厚くおおわれ,多量の白毛を出す。雄は体長約 3mm,前翅は黒く,体は橙黄色で白色粉がある。柑橘類をはじめ多くの植物の害虫として有名である。オーストラリア原産で,日本には 1910年頃にアメリカ合衆国と台湾から苗木について侵入し,いまでは本州以南の日本全土,熱帯,亜熱帯の各地に広く分布している。なお本種の侵入が日本で植物検疫制度を定める動機となった。ミカンコナカイガラムシ Planococcus citri (コナカイガラムシ科) は,雌は直径3~4mm,体は楕円形で橙黄色であるが,表面は白色のろう物質におおわれる。正中線は露出し黄色がかる。周縁には 17対の白ろう毛がある。柑橘類,クワ,ラン,シュロ,ヤシなどの害虫で,温室の園芸植物を加害することが多い。本州以南の日本全土,台湾,ミクロネシアなどに分布する。 (→同翅類 , 半翅類 )  

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百科事典マイペディアの解説

カイガラムシ

半翅(はんし)目ワタフキカイガラムシ科および近縁の数科に属する昆虫の総称。多くの種類があり,若齢の幼虫はよく歩き回るが,やがて植物,特に樹木の葉,枝,幹などに固着し,その汁を吸う。
→関連項目石灰硫黄合剤

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カイガラムシ
かいがらむし / 介殻虫
scales

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目カイガラムシ上科Coccoideaに属する昆虫の総称。世界で約1万種、日本に約500種が知られ、ワタフキカイガラムシ科、カタカイガラムシ科、マルカイガラムシ科、コナカイガラムシ科などの各科があり、それぞれ多くの種が含まれる。アブラムシに近縁で、コナジラミ、キジラミなどの上科とともに腹吻(ふくふん)群Sternorrhynchaに分類される。口吻は前脚基節間から出るようにみえ、脚(あし)(ふせつ)が1、2節である点などがこの群の特徴である。カイガラムシは、触角が多くの節からなり、節は1節でその先端に1本のつめがあることで、腹吻群のほかの上科から区別される。[林 正美]

形態・生態

カイガラムシは形態、生態とも非常に特殊化している。植物体上に密着して寄生固着生活をするために、体は一般に単純化し、触角、目、はね、脚などが退化し、頭、胸、腹部の境も不明瞭(ふめいりょう)である。初齢幼虫は普通、運動能力があるが、成長とともに運動器官は退化していき、雌成虫では運動機能をほとんど失ってしまう。雌成虫はその形態が幼虫からあまり変化しておらず、幼形成熟(ネオテニー)の一例と考えられる。一方、雄成虫は多節の触角、目、2枚のはねをもち自由に飛ぶことができる。ところが、口吻は退化し、彼らは餌(えさ)をとらずに短い命を交尾するためだけに生きるのである。[林 正美]

完全変態をする雄

半翅目の昆虫は不完全変態を行う昆虫群とされるが、このカイガラムシは蛹期(ようき)をもった完全変態を行う。雌では典型的な不完全変態であるが、雄は幼虫期ののち、前蛹を経て蛹(さなぎ)になる。そして、完全変態がカイガラムシ本来の成長過程と考えられる。雄は、幼虫期にいったん単純化した体も、羽化すると、頭、胸、腹部の区別が明瞭になり、長い触角、2枚のはね、3対の脚を備えた成虫となる。[林 正美]

特異な生活史

運動機能をほとんど失った雌は植物体上に寄生して固着生活をし、種類によっては単為生殖で繁殖する。胎生、卵胎生、卵生があり、母体内に卵塊を産むもの、体の覆いの中に産卵して孵化(ふか)するまで保護するものなどいろいろである。1齢幼虫は自由生活をし、寄主を求めて動き回るが、2齢期以降は寄生固着生活となり、体制は単純化し、分泌物で体を覆うようになる。幼・成虫の分泌物や形は種類によってさまざまであり、多くのものではろう質物、樹脂様物質、タンパク性物質などを、貝殻状、球状、紐(ひも)状、綿状、粉状に分泌して虫体を覆う。カイガラムシの名前はこの覆いに由来している。
 カイガラムシは種々の植物に寄生し、多くは狭食性である。排出物は糖分を多量に含んだ液体で甘露とよばれる。これはアリなどの好餌(こうじ)となり、アブラムシと同様に、アリとの共同生活に適している。[林 正美]

天敵による防除

カイガラムシはほかの昆虫のすみにくい住宅地、市街地、工場地帯などにも多く発生する。自然環境の保存されていないこのような所では天敵もすめず、そのため、庭木や果樹に大きな被害をもたらす結果となる。それゆえ、カイガラムシは都市型昆虫とされ、都市化の一指標となるものである。
 果樹などに大発生したカイガラムシを薬剤によって駆除するのは、効果のわりには莫大(ばくだい)な費用がかかる。ところが、より効果的な防除法として、天敵を利用する生物的防除がある。天敵を増殖し、被害地域に放すのである。イセリヤカイガラムシにはベダリアテントウ、ルビーロウムシにはルビーアカヤドリコバチ、クワコナカイガラムシにはクワコナヤドリコバチが利用され、それぞれかなりの好結果が得られている。[林 正美]

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