日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガン条約」の意味・わかりやすい解説
ガン条約
がんじょうやく
一八一二年戦争(イギリス・アメリカ戦争)の講和条約。イギリス・アメリカ条約ともいう。米英間の戦争開始直後から、ロシアの仲介などにより和平への道が探られていたが、13年11月14日にイギリスが直接交渉を提案、アメリカ合衆国もこれを受諾して、翌14年の後半、ベルギーのガン(ヘント)で和平交渉が行われた。合衆国のおもな要求であった強制徴募の廃止は見込みなしとして早々に撤回されたが、イギリス側は、インディアン保護のための緩衝地帯の設置を含む多くの要求を提出、合衆国はこれを拒否した。さらにイギリスの現有状態維持の原則の主張も、10月中旬のモントリオールに近いシャンプレーン湖上でのイギリス軍敗北の報によって合衆国側に拒否され、交渉は行き詰まった。しかし、長年の戦争によるイギリス経済の疲弊や、五大湖地方の制覇なしには決定的勝利はありえないというウェリントン公爵の意見により、結局、戦争以前の国境線に戻すことで合意をみた。14年12月24日に調印されたこの条約では、戦争の原因となった強制徴募や中立国の権利などについてはまったく触れられず、敵対行為の終結、カナダと合衆国との国境線を定めるための委員会の設置、米英両国が奴隷貿易廃止のために努力することなどが決められたにとどまり、両国間の問題はなにも解決されなかった。
[竹本友子]