キール(読み)きーる(英語表記)Kiel

翻訳|Kiel

デジタル大辞泉 「キール」の意味・読み・例文・類語

キール(Kiel)

ドイツ北部、バルト海に面する港湾都市シュレースウィヒホルシュタイン州の州都。北海に至るノルトオストゼー運河が通じる。造船・機械・電子機器などの工業も盛ん。中世以来ハンザ都市として繁栄。旧軍港で、1918年に起こった反乱がドイツ革命の口火を切った。

キール(〈フランス〉kir)

クレーム‐ド‐カシス白ワインで割ったカクテル。多く、食前酒とする。

キール(keel)

船の竜骨りゅうこつ

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精選版 日本国語大辞典 「キール」の意味・読み・例文・類語

キール

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] keel ) (船の)龍骨(りゅうこつ)
    1. [初出の実例]「船はいたく龍骨(キール)を破損され」(出典:十五少年(1896)〈森田思軒訳〉三)

キール

  1. ( Kiel ) ドイツ北部、ユトランド半島の基部、キール湾の湾奥にある都市。キール運河のバルト海側の入口にあたり、第二次世界大戦末までドイツ海軍の基地がおかれた。一二八四年、ハンザ同盟に参加し、商業都市として発展。一九一八年、水兵の反乱が起こり、ドイツ革命の導火線となった。

キール

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] kir ) 辛口の白ワインに、クレーム‐ド‐カシスを混ぜ合わせたカクテル。多く食前酒とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キール」の意味・わかりやすい解説

キール(ドイツ)
きーる
Kiel

ドイツ北部、シュレスウィヒ・ホルシュタイン州の州都で港湾都市。人口23万2600(2000)。ハンブルクの北方約100キロメートル、バルト海沿岸でもっとも水深があり、景色のよい天然の良港キール湾の湾奥に位置する。最古の市街地は湾奥の西岸にあり、そのすぐ北にノルト・オストゼー運河(「北海バルト海運河」の意。キール運河ともいう)の閘門(こうもん)が並ぶ。工業は湾の東岸と運河の北に集中し、造船のほか機械、電子機器、光学、繊維、食品など多様である。中心駅には州内各地からの支線が集まり、港からはノルウェーのオスロに定期便の連絡がある。古い市街の中心には、後期ゴシック様式のニコライ教会が再建されている。また、世界経済研究所その他の文化施設が多い。毎年「キールの週」というヨットレースを含む祝祭が催され、外国からも多くの人々が訪れる。

[齋藤光格]

歴史

13世紀前半に市となり、商業を通じて発達、1284年にはハンザ同盟に加わった。以後デンマークの影響下にあって、この地の公の居地となり、1665年には大学も設置された。1773年デンマークに編入されたが、1864年のプロイセン・オーストリア対デンマークの戦争の結果、デンマークから離れ、66年プロイセンに統合された。戦略的位置と良好な港湾に着目されて海軍根拠地に選ばれ、1871年からはドイツ帝国軍港となり、バルト海鎮守府が置かれた。海軍に関連する造船・機械工業の拡大、95年のノルト・オストゼー運河の開通によって急速に発展した。1918年11月初め、第一次世界大戦での敗北を目前にして最後の出撃を企図した海軍指導部に対し、平和を求める水兵らがキールで蜂起(ほうき)し、兵士評議会を樹立してドイツ革命の口火を切ったことは名高い。以後もキールは海軍基地として機能し、第二次世界大戦中は連合軍の爆撃で大きな損害を被った。

[木村靖二]


キール(竜骨)
きーる
keel

船体の底部にあって、中心線に平行に船の全長にわたって通されている構造部材で、竜骨(りゅうこつ)ともいう。動物に例えれば背骨にあたり、もともとは木船の船体構造の中心として縦方向の力材の役を果たしていた。鋼船のキールには方形キール平板キールがある。方形キールは、木船で用いられていた角材のキールの変形で、鋼船の初期には大形角形棒がよく使用された。しかし現在では、細長い鋼の厚板をスケートの刃のように船底に取り付けた方形キールが漁船などで使われているほかは、すべて平板キールに変わっている。これは船側や船底の外板となんら変わりはなく、木船のキールと同じ場所にあるので、キールという名称が残っているにすぎない。

[森田知治]


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改訂新版 世界大百科事典 「キール」の意味・わかりやすい解説

キール
Kiel

ドイツ北部,シュレスウィヒ・ホルシュタイン州の州都。人口23万3795(1999)。ユトランド半島のバルト海側のつけ根に位置し,湾口水深40mのキール湾に面し,北海とバルト海を結ぶキール運河も有する港湾都市であり,造船業を中心とする工業・商業都市でもある。地理上の有利さから早くから商業都市として発展,1242年に都市権を得,84年にはハンザ同盟の一員となった。1665年にはキール大学も創立された。この間さまざまな公・伯の居地となったが,1773年デンマーク王国に編入,1866年にはプロイセン領となった。ドイツ帝国成立後,71年から1918年までは軍港として指定され,鎮守府が置かれた。キールの近代の発展は軍港としてのそれに重なっている。1895年のキール運河(北海・バルト海運河)の開通とその後のドイツ海軍の拡張によって,キールは海軍の重要な戦略上の位置を占めるにいたった。第1次大戦末期の1918年11月初め,この地のドイツ艦隊の水兵が,待遇改善と講和を求めて蜂起し,労働者・兵士評議会支配を確立し,その後のドイツ革命の出発点となったことで知られている。第2次大戦の終りまで海軍根拠地として機能したが,大戦末期連合軍の爆撃の主要対象の一つとなり,市の建物の大部分が破壊された。
執筆者:


キール
keel

船底の船体中心線位置において船首から船尾まで縦通し,船首材,船尾材と結合される部材。船体の背骨に相当するもので竜骨とも呼ばれる。船体構成上の基本部材であるとともに縦強度を支持する構造部材の一つである。キールには方形キールbar keelと平板キールflat plate keelがある。方形キールは船底から突き出た長方形断面の部材であり,構造が簡単で,海底接触の場合に船底を保護し,さらに横揺れを減らし,横流れを防ぐ効果があるので,木船,強化プラスチック船などの小型船に使用される。木船では,肋骨,隣接する船底外板と結合され,肋骨の押えとする中心線内キールとともに船底構造の主要部を構成する。強化プラスチック船では,長方形断面の木材を強化プラスチックで包み船底に固着する。鋼船では平板キールが広く使用されている。これは他の船底外板より少し厚い平板状の部材であり,肋板,隣接する船底外板および中心線桁板と溶接され強固な船底構造を構成する。方形キールと異なり,船底が平滑になるため,喫水が増加せず,また入渠(にゆうきよ)時に船体重量の主要部分を支持するのにもつごうがよい。なお,独特の発達をした大和型船を典型とする和船では,船底の船体中心線位置にあって船底から突き出た航(かわら)または敷(しき)と呼ばれる部材がキールに相当する。
執筆者:


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キール」の意味・わかりやすい解説

キール
Keill, John

[生]1671.12.1. エディンバラ
[没]1721.8.31. オックスフォード
イギリスの物理学者,数学者。エディンバラ大学でデービッド・グレゴリーのもとに学び,その後,師とともにオックスフォードに移る。1700年にロイヤル・ソサエティ会員となり,1712年にオックスフォード大学天文学教授。アイザック・ニュートンの物理学をいちはやく受容し,その初期の発展・普及に貢献した。1708年にはニュートンの万有引力の概念を物質微粒子に応用し,物質作用の理論を展開。主著『自然学入門(真の物理学および真の天文学に対する入門書)』Introductiones ad veram Physicam et veram Astronomiam(1701)は,ニュートン理論に立つ優れた教科書として,18世紀末まで用いられた。また同書のオランダ語版は,鎖国下の日本に持ち込まれ,通詞だった志筑忠雄が訳述を試み,『暦象新書』を著した。

キール
Kiel

ドイツ北部,シュレースウィヒホルシュタイン州の州都。北海=バルト海運河 (キール運河) のバルト海側の入口にあたる重要港湾都市。バルト海西部のキール・フィヨルドの湾奥に 10世紀初め成立。 1284年ハンザ同盟に加わり,商港として発展。 1721~73年ホルシュタインゴットルプ公領の首都,以後デンマーク領,1866年プロシア領に編入され,71年軍港となって以来急速に発展。第1次および第2次世界大戦中は,ドイツ海軍最大の軍港となった。そのため爆撃により市街の3分の1以上を焼失したが,戦後は行政,学問,文化の町,商港として復興。工業には造船,機械,水産加工,印刷などがあり,石炭,木材,石油,機械の取引が盛ん。聖ニコラス聖堂 (1240頃建設) とその前の広場が旧市の中心であるが,いまは小キール湖公園近くに市庁舎や市立劇場,キール大学が集り,戦後の中心街が整備され,海岸沿いに遊歩道が設けられるなど,市街は面目を一新している。毎年6月の「キール週間」には,国際的なヨットレースや文化祭が行われる。人口 23万8281(2010)。

キール
keel

船の竜骨。船体の中心線に沿って船底を船首から船尾まで貫通する部材。船体縦強度を分担し,人体の背骨に相当する。平板キール,方形キール,箱形キールなどの種類がある。最も多く用いられる平板キールは,船底外板より厚い鋼板で,中心線桁板,中心線内底板と組合わさってガーダ (縦桁) を形づくる。大型船に使われて,十分な縦強度を発揮する。この中心線桁板を左右2枚に分け,中央を箱形の管通路としたものを箱形キールという。また方形キールは鍛鋼材または厚鋼板で造り,断面が長方形の棒状で,船底に突出して喫水を増す。構造が簡単で堅固,横揺れを軽減させるので小型船に用いられる。

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百科事典マイペディア 「キール」の意味・わかりやすい解説

キール

ドイツ,シュレスウィヒ・ホルシュタイン州の州都。キール湾奥の港湾都市,軍港,遠洋漁業根拠地。造船・機械・繊維工業が行われる。キール大学(1665年創立)がある。1242年自治権を得,1284年ハンザ同盟に加入。18―19世紀デンマーク領。1871年ドイツ帝国の軍港となり,1895年のキール運河(北海・バルト海運河)の開通とその後のドイツ海軍の拡大とともに大発展。1918年水兵の反乱がドイツ革命の発端となった。第2次大戦末期連合軍の爆撃を受け市の大部分が破壊された。国際的ヨットレースが行われる。23万9866人(2012)。

キール

白ワインがベースの中甘口のカクテル。よく冷やした辛口の白ワイン4に対してクレーム・ド・カシス1を加え,軽くかきまぜる。白ワインを多めにしてもよい。赤く澄んだ色が美しく,食前酒として人気がある。第2次大戦後,フランスのブルゴーニュ地方にあるディジョン市の市長を長年務めたキャノン・フェリックス・キールが,ブルゴーニュ一帯で産する辛口白ワインとディジョン特産のクレーム・ド・カシスを用いて考案したカクテル。白ワインをスパークリングワインに変えるとキール・ロワイヤルと呼ばれ,やはり食前酒として好まれている。

キール

竜骨とも。船体の底部中央を船首から船尾まで縦通し,底部脊柱の役目を果たす最も重要な部材。方形キール,平板キールがあるが,大型船は船台,ドック内での安定のためすべて平板キールを用いる。
→関連項目カナディアン・カヌー喫水船台トリム(船舶)ヨット

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旺文社世界史事典 三訂版 「キール」の解説

キール
Kiel

ドイツ北部にある港湾都市。シュレスヴィヒ−ホルシュタイン州の州都
1242年自治権を獲得し,84年ハンザ同盟に加入,商業の中心地として繁栄。18世紀にデンマーク領に,1866年にプロイセン領となった。北海とバルト海を結ぶキール運河の基点であり,海軍上の要地であった。1918年10月,キール軍港の水兵の反乱に始まるドイツ革命の発火点となった。第二次世界大戦中連合軍の爆撃にあい,甚大な被害を受けた。

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飲み物がわかる辞典 「キール」の解説

キール【Kir】


カクテルの一種。ワイングラスに白ワイン、クレーム・ド・カシスを注ぎステアする。ショートドリンク。1945年、フランスのブルゴーニュ地方、ディジョンの市長キャノン・フェリックス・キールが考案したレシピ。同市特産のブルゴーニュ・アリゴテという白ワインの宣伝のためのレセプションで食前酒としてふるまわれたのが始まり。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「キール」の解説

キール
Kiel

シュレースヴィヒ‐ホルシュタイン州政府所在の港湾都市,大学都市。ドイツ統一以来軍港として栄え,ここに起こった水兵の反乱がドイツ革命の口火となった。

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ダイビング用語集 「キール」の解説

キール

フィンのブレードの両サイドの固い部分。(=サイドリブ)

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキールの言及

【カクテル】より

…静かに混ぜてから,泡だてておいた45%クリームを,5スプーンほどコーヒーの上に浮かせる。 キール中甘口。ワイングラスにクレーム・ド・カシス10mlを先に注ぎ,よく冷やした辛口の白ワイン120mlを注ぐ。…

【竜骨突起】より

…鳥類の胸骨下面からその正中線に沿って垂直に突き出た突起で,胸峰carinaともいう。この突起は,胸筋(翼を動かす大型の筋肉)の付着面として役だっている。したがって,胸筋のよく発達した,羽ばたきの強い鳥では竜骨突起は大きく(とくに深さが深い),飛翔(ひしよう)力の退化した鳥では小さいか退化している。たとえば,走鳥類(ダチョウの仲間)の胸骨は下面が平らで,竜骨突起といえるものがない。いっぽう,竜骨突起がよく発達している鳥は,スズメ目の大部分,アマツバメ目,ハト目,キジ目などである。…

※「キール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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