19世紀中葉のアメリカの地理学者,教育家。スイスのヌシャテル湖畔に生まれ,ヌシャテル大学を経て,1825年ベルリン大学に学ぶ。初め神学を志したが,地理学者K.リッターの講義を聞き,A.vonフンボルトと知るに及んで地理学に転向した。高等学校教師時代にはアルプスの氷河研究に熱中し,氷河学者としても一家をなした。46年同郷の親友,生物学者J.L.R.アガシーの招きによりアメリカに渡り(のちアガシーとともに帰化),ボストンで地理学の連続公開講義を行い,48年この講義を《地人論》《The Earth and Man》と名づけて刊行した。リッターを祖述した目的論的地理学とされているが,当時としては生新な自然地理概説書で,かなりの好評を得た。54年プリンストン大学の教授に任命され,在任30年,この間,地形学,気象学,地理教育に著しい業績を残した。なお,大洋底から1000m以上突起している平頂海山もギヨーと呼ぶが,1946年に北西太平洋でこれを発見したH.H.ヘスが,ギヨーにちなんで命名したものである。
執筆者:辻田 右左男
海山のうち山頂がほぼ平坦で水深が深いもの。平頂海山ともいう。1946年ヘスH.H.Hessにより北西太平洋で発見され,スイス生れのアメリカの地理学者ギヨーにちなんで名づけられた。その後世界各地で発見されている。中部太平洋のギヨーから白亜紀の造礁サンゴや二枚貝化石が採集され,ギヨーはかつて海面上にあった火山島が波食され,その平坦面上にサンゴ礁が形成されていたがなんらかの原因で2000m以上も沈下したものだとされた。ビキニ環礁,エニウェトク環礁の掘削でもサンゴ礁の基底は1500mにも達していて,ギヨーと似た沈下があったことがわかった。
海底火山が活動終了後に沈下する原因は,海洋プレート自体の沈降もあるが,山体そのものの沈下も考えられている。日本付近では襟裳(えりも)海山,鹿島第一海山などがギヨーであり,山頂から白亜紀の貝化石や有孔虫化石が採取されており有名である。
執筆者:佐藤 任弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
深海底からそびえたつ海山で、頂上部が平らで広いもの。発見者H・H・ヘスが19世紀のスイス生まれの地質学者ギヨーA. H. Guyot(1807―1884)の名にちなんで名づけた。日本では平頂海山ともよばれる。円形または長円形で火山性である。かつては頂部を海面上に現していた火山島が、波食によって頂上部が平坦(へいたん)にされたのち、沈降によって海山となったものと考えられている。沈降の原因には種々の仮説があるが、プレートテクトニクスによるのが有力である。
[安井 正]
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
… 海裂gapabyssal gap―海嶺または海膨の中の狭い切れ目。 ギヨーtablemount―guyot平頂海山ともいう。比較的滑らかな平らな頂上をもつ海山。…
…火山体が沈降を続けるとサンゴ礁は環礁となっていく。また,あるものはそのまま沈水してギヨー(平頂海山)となる。これら海底火山の成因およびその後の沈降という機構には,まだ解明されていない点が多い。…
※「ギヨー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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