クリスマスの時期に歌われる宗教的な民謡を総称する。ただし,キャロルは英語の呼び方で,フランスではノエルnoël,ドイツではクリスマスのリートWeihnachtslied,スペインではビリャンシーコvillancicoと呼ばれる。どの国の場合も,親しみやすく明るい調子の曲が多い。歌詞のイメージは一般に素朴ながら新鮮で,民衆のクリスマスに寄せる喜びが,たくまぬ修辞で率直に歌い上げられているのが特徴である。フランスのノエル《ヨセフは良き嫁をめとりぬ》に見られる日常的庶民的な発想や,ドイツのクリスマスのリート《バラが咲いた》(日本基督教団賛美歌96番《エサイの根より》)に見られる,イエスの降誕を冬の真夜中に花開く一輪のバラにたとえたイメージの鮮烈さなどを,その例として挙げることができよう。
キャロルcarolの語源は,中世フランスの輪舞カロルcaroleであるとされている。14~15世紀イギリスのキャロルには,輪舞の際の歌唱形式にふさわしく,折返し句が1句ごとに反復される形がよく見られ,ラテン語と俗語(方言)が入りまじっているのが特徴である。ラテン語と俗語の混交は,古いドイツのクリスマスのリートにもしばしば見られる。ノエルやビリャンシーコでは,ノエ・ノエという言葉が明るい歓喜の表情で繰り返されることが多い。
キャロルは,中世から18世紀にかけて数多く作られ出版されると同時に,すぐれたキャロルは教会公用の賛美歌の中に採り入れられた。ルター派ドイツ福音主義教会のクリスマスのコラールの大半は,民衆的なリートに起源をもつものである。また日本基督教団賛美歌集の降誕の部には,イギリス,フランス,ドイツ,ボヘミアなどのクリスマス・キャロルの多数の例が含まれている。
執筆者:服部 幸三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イギリスの作家ディケンズの中編小説。1843年刊。その後数年にわたって発表された5編の『クリスマス物語集』の第一作。主人公スクルージは人情のかけらもないけちん坊の守銭奴だが、クリスマスの前夜に、もと共同で事業をやっていた男の幽霊に会い、自分の過去、現在、未来の姿を見せられた結果、己の罪を悔い改めて人間らしい心を取り戻す。子供にもなじみ深い物語であるとともに、「クリスマス哲学」とよくいわれる、ディケンズの社会観、人間観を端的に示した作品。
[小池 滋]
『安藤一郎訳『クリスマス・カロル』(角川文庫)』
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…とくに,クリスマスが子どもを中心とする家族の祭りとなったことがこの時代の特徴である。クリスマス・ツリー,サンタ・クロース,クリスマス・カードが導入され,クリスマス・キャロルが復活し,クリスマス・プレゼントやクリスマス正餐(ディナー)が庶民の家庭に進出した。今日のクリスマスはこのときから始まった。…
… 彼が死んだとき,ある子どもが〈今年からはサンタ・クロースが来ないんだね〉と言ったといわれる。とくに《クリスマス・キャロル》(1843)によって,ディケンズすなわちクリスマス精神という一般的評価が確立しており,彼は一人の人間として万人に愛され,伝説化していた。しかし現実のディケンズは,けっして模範的人物ではなかった。…
※「クリスマスキャロル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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