リート(読み)りーと(英語表記)Lied ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リート」の意味・わかりやすい解説

リート
りーと
Lied ドイツ語

歌曲。17、8世紀にはドイツ語の叙情詩による有節形式の簡素な歌曲を示したが、今日ではドイツ語による歌曲全般をさすことが多い。フォルクス・リートVolkslied(民謡)、クンスト・リートKunstlied(芸術リート)、コアー・リートChorlied(合唱リート)などの区別がなされることもある。わが国ではリートは通常クンスト・リートをさす。ピアノ伴奏の作品が多い。

 リートは17、8世紀から作曲されているが、これらはフォルクス・リートに近く、芸術性に欠けていた。19世紀初頭に活躍したシューベルトは『糸を紡ぐグレートヒェン』『野ばら』『鱒(ます)』『冬の旅』などを作曲し、これらによってリートの規模を拡大し、伴奏のピアノに多彩な表現力を与えた。彼によってクンスト・リートが開花したといわれる。シューベルトに続いてシューマンブラームスウォルフマーラー、R・シュトラウスなどがリートに優れた作品を残した。この伝統は20世紀の作曲家ロイター、ヘンツェなどにまで受け継がれている。

[石多正男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リート」の意味・わかりやすい解説

リート
Lied

ドイツの歌曲。特に 19世紀以降ゲーテ,ハイネ,アイヘンドルフらのロマン派抒情詩に触発されて,音楽と詩の理想的な融合を目指し,シューベルト,シューマン,ブラームスらによって開拓され,H.ウォルフで頂点に達した芸術歌曲をいうが,ミンネジンガー,マイスタージンガー時代のものや 15~16世紀の多声的歌曲を含めてドイツ歌曲一般をいう場合もある。

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