小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。20代に最も多く発症しますが、ほかの年代にもみられます。欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。
遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、解明されていません。食生活の欧米化によって患者数が増えているといわれ、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因のひとつと考えられています。
下痢、腹痛、発熱、体重減少、全身
また消化管以外の症状として、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、
潰瘍性大腸炎と異なり、炎症は口腔から肛門までの消化管全体に起こりえますが、最も病変が生じやすいのは
クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜のなかに潰瘍やびらんがとびとびにみられます。また、
薬物療法として、5アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。食べ物が原因のひとつとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白質を含まない流動食を開始します。成分栄養剤は栄養状態改善のためにも有効です。
炎症が改善し普通食に近いものが食べられるようになっても、脂肪のとりすぎや食物繊維の多い食品は避けます。腸に狭窄や
インフリキシマブ(レミケード)は、抗TNFα抗体製剤といわれる薬剤で、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合にとくに有効です。アザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬も使用することがあります。
長期にわたって慢性に経過する病気であり、治療を中断しないことが大切です。治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。
厚生労働省の特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。
日比 紀文, 高木 英恵
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
1932年にアメリカのクローンB.B.Crohnらが限局性腸炎(または終末回腸炎)として報告した疾患。その後,消化管のあらゆる部位に出現することが判明。小腸,大腸,ときには両者に発生することが多い。原因不明。腸壁全層にわたる炎症で,肉芽腫と呼ばれる細胞の団塊状集族反応を伴う。不連続のさまざまな潰瘍ができるが,腸管軸方向に長いことが多く,周辺は玉石を敷きつめたような凹凸を示す。潰瘍底には深いきれこみを伴うことがあり,近隣の腸管や体壁と交通路を形成することがある。日本ではまれな病気であったが増加の傾向にある。若年者に多い。長期にわたりくり返す下痢,腹痛,微熱が続き,体重減少を伴い,肛門周囲に炎症を合併することもある。X線,内視鏡で検査することにより診断できるが,病型がさまざまで他の病気と区別することは容易ではない。入院して安静にし,食餌療法,薬物で治療するが,難治性であり,手術による病変部の切除が有効。
執筆者:酒井 義浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(2013-5-22)
(2015-7-22)
突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...