環境保全や持続可能な循環型社会を基盤としながら、経済成長、雇用創出、技術革新を実現していく経済活動のこと。エネルギーや資源の集約度を調整し、環境の負荷を減らしながら、高効率な省エネ・低炭素設備や再生可能エネルギー設備への投資(グリーン投資)分野に重点的に資金などを配分することで、環境保全と同時に、経済の発展を図っていくビジネスモデルが考えられている。
アメリカ大統領オバマが2008年に表明した「グリーン・ニューディール政策」は、グリーン経済の典型例となっている。再生可能エネルギーや省エネルギー自動車の技術開発ならびに産業の育成、スマートグリッドの送配電網の普及など、環境重視型の産業の発展を促すことで、雇用の創出と同時に、環境対策や技術革新を一気に進めようという政策である。
日本でも2009年(平成21)に環境省が「緑の経済と社会の変革」を発表し、日本版グリーン・ニューディール政策に取り組んだ。また民主党政権においても2010年6月に示した「新成長戦略」のなかでグリーン・イノベーションを成長分野の一つとしてあげている。
一方、グリーン経済の取り組みでは、先進国と開発途上国との隔たりが国際的な課題となっている。2012年6月に開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)では、「持続可能な開発のための制度的枠組み」のテーマと並び、「持続可能な開発および貧困根絶の文脈におけるグリーン経済」をもっとも重要なテーマとして取り上げたが、経済活動を制限されることを懸念する途上国と、先進国の溝は埋まらず、グリーン経済の進展のうえでは後退したともとれる結果に終わった。
国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)が2011年に発表した報告書「グリーン経済に向けて」(Towards a Green Economy)では、グリーン経済を「環境リスクを大きく減らし、生態学上の希少性を守りながら、厚生と公正を改善する経済である」と定義している。持続可能な開発を実現していくためには、社会、経済、環境の分野を通じて自然資源を統合的に考慮した取り組みが必要である。そのため、途上国の貧困根絶につながる食糧の確保や安全保障のため、農法や農業技術の向上などといったさまざまな取り組みが必要となるが、途上国が次なる段階に進む具体策はまだみえていない。
[編集部]
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