翻訳|coronagraph
皆既日食でなくても,太陽コロナの一部が観測できる天体望遠鏡。コロナに比べて,1万倍以上も明るい輝度をもつ太陽本体(光球)がコロナに隣接しているため,人工的な皆既日食にするだけでなく,鏡筒内で生ずる太陽光の散乱をきわめて少なくするようにくふうされている。図に示すように望遠鏡の焦点位置Bに,月に見たてた円錐鏡を置いて太陽光を遮る。対物レンズAは,構成レンズの枚数が多いと,それだけレンズ表面による太陽の反射光が多くなるので単レンズを使い,しかも単レンズの表面反射光がGのほうにいかないように小円板Eを置く。また対物レンズの縁による回折光を遮る絞りFを置くことも大事である。そして塵埃の多い都会では散乱光が多いので空気の清澄な高山に設置する。コロナグラフの対物レンズに,クモ糸が1本横切るだけで散乱光が増しコロナが見えなくなる。実際にはGの位置に分光器を置き,コロナ特有の輝線を観測し,コロナ中の温度分布を求め,コロナが高温に加熱されている原因を調べる。1930年フランスのB.リオが考案したもので,標高2862mのピク・デュ・ミディ山頂で初めてコロナの輝線を観測した。
執筆者:日江井 栄二郎
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皆既日食でなくても太陽コロナを観測できる天体望遠鏡。太陽本体に比べて100万分の1の微弱な明るさしかないコロナを見るために、望遠鏡内の散乱光をきわめて少なくするように工夫されている。そのために、(1)主焦点位置に月に見立てた円板を置いて人工的な皆既日食にする、(2)対物レンズは単レンズを使い(したがって色収差のあることを承知する)、レンズの表面による反射光を少なくする、(3)対物レンズの縁による回折光を遮るようにしている。さらに地球大気による散乱光の少ない高山に設置される。太陽観測用の科学衛星に搭載され、コロナ中の質量放出現象の観測にも活躍している。また、太陽系以外の恒星にあるかもしれない惑星の探査にも、この装置が使われている。惑星はそれを支配している恒星の光を反射させるだけで、自らは光を放射していないので、恒星に比べて非常に暗い。しかし、コロナグラフを使って恒星の光を遮光板で遮ることで、その近くにある惑星の微弱な明るさをとらえることができる。現在のところ、恒星から遠くにある木星に相当するような惑星は見つかっているが、地球のような惑星は見つかっていない。
[日江井榮二郎]
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… 可視光の輝線は総量がわずかであるが,それは輝線の線幅が狭いからであり,輝線の波長の光では連続光の何十倍も明るいものがあり,活動領域ではもっと明るい。高山に設置されているコロナグラフはこの事情を利用したもので,いわばコロナ輝線の単色像を常時観測するための装置である。 彩層が光球の延長程度の温度であるのに,それに接しているコロナが100万K以上の高温であるのは意外であるが,実はその間をつなげるたいへん薄い層があるのである。…
※「コロナグラフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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