翻訳|photosphere
太陽や恒星の表面近くの層をいい,光球層ともいう。もう少し厳密な定義は,太陽や恒星の大部分の光を発している層ということができる。恒星は太陽も含めて高温のガス体であって光球層より深い層も光を発しているが,光球による吸収のため表面に出てこない。また光球層より浅いところにもガスがあって光を発しているが,希薄なためにその光は光球から発せられる光に比べて格段に小さい。太陽では温度6000Kの光球の発する光は主として可視光線からなり,光球とは肉眼で見える太陽の表面層であるといえる。太陽よりはるか高温の星では光球の発する光は紫外線が主で,また低温の赤く見える星では赤外線が主である。特別に半径の大きな超巨星以外は,光球層の厚みは星の半径に比べきわめて小さく,太陽では69.6万kmの半径に対し,約0.06%の約400kmにすぎない。
以下,太陽に限って述べる。太陽がガス体であるにもかかわらずその縁がくっきりと見えるのは,光球がこのように薄いためであって,もし太陽の近くにいって観察することができれば数百kmの幅にわたって縁がぼやけて見えるであろう。光球の発する放射の波長による分布は,温度6000Kの黒体放射の波長分布とよく似ており,このことから光球の温度は約6000Kであることがわかる。黒体放射からのわずかなずれは,光球自身による光の吸収が波長により異なるためである。その吸収は主として水素原子に電子が付着した負の水素イオンによる。この波長によるわずかなずれを用いて,光球層内では上層ほど下層に比べて温度が低いことを導くことができる。また太陽面の明るさは中央部でもっとも明るく,周辺部で暗い。この現象を周辺減光といい,やはり上層が低温であることを意味する。光球の最下層の温度は6400K,最上層では約4300Kである。その上に彩層と呼ばれる層があるが,ここでは逆に上の層ほど高温になっている。また光球の密度はおよそ10⁻7g/cm3で,圧力は105dyn/cm2,すなわち約0.1atmである。光球層内の任意の高さでの圧力のバランスを見ると,そこより上の層にあるガスの重みをそこのガス圧で支えており,静力学的平衡が成り立っている。太陽光を分光器に通して7色に分け詳しく調べて見ると,連続光の中に多数の暗線が見える。これをフラウンホーファー線という。高温の下層からの光を,低温の上層にある原子がその特有の波長で吸収するために暗線が生ずるのである。かつては暗線を生ずる光球層の部分を反彩層といい,光球と区別していた。原子の数が多ければいっそう暗い暗線ができるので,光球内の各元素の存在比を求めることができる。数の比で90%が水素,約10%がヘリウム,酸素,炭素,窒素がそれぞれ0.01~0.07%,Ne,Mg,Si,S,Feがそれぞれ0.002~0.004%である。ほかに原子番号92のウランに至る多くの微少元素が確認されている。
光球層内では熱のエネルギーの流れは放射によって下層から上層へ伝えられている。これに対し光球より下の対流層では,対流によって熱が伝えられている。色フィルターを通して太陽面の拡大写真を撮ると,太陽全面が約1000kmの大きさの明暗の斑点に覆われていることがわかるが,この斑点を粒状斑と呼んでいる。これは対流の現れであり,光球層というフィルターを通して対流層の最上層を透かして見ていることになる。また,直径3万kmほどの太陽表面に沿った流れのパターンが光球全面に見いだされており,粒状斑との類推で超粒状斑と名付けられている。その寿命は約1日で,粒状斑の寿命約8分と比べて長い。超粒状斑どうしが相接する狭い線状の領域は磁場が強く,太陽光球全面で見ると磁場の強い場所は網状になって分布している。光球全面はまた振動する大小さまざまの斑点に覆われており,周期およそ5分で上下振動している。その大きさは小さいもので約3000km,大きいものは数万km以上になる。大きいサイズのものほど振動周期が長い。また一定の大きさのものに限っても周期はいろいろあるが,4分から8分の間の飛び飛びの値をとる。これはガスの圧力を復原力とする定在粗密波(定在音波)がつねに太陽内部に励起されており,離散的な固有振動として現れているものと解釈されている。地球内部を伝わる地震波の解析により地球内部の構造が知れるように,この5分振動の精密な観測により太陽内部,とくに光球直下の対流層の温度分布や太陽の自転周期が深さとともにどう変わるかなどを推定することができる。また光球には黒点,白斑などの局所的な現象が現れ,どちらにも強い磁場が存在することが確認されている。
執筆者:平山 淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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太陽や恒星の表面を覆う大気層であり、これらの星々が宇宙空間に放射している光のエネルギーの大部分の量が、ここから直接放出されている。放射エネルギーの吸収・放射に関与している原子は、おもに負水素(中性な水素に電子1個が加わり負の電荷を帯びたイオン)である。この厚みは、超巨星を除いて、星の大きさに比べて小さい。太陽では約500キロメートルで太陽半径の約0.06%にすぎない。光球の温度が高いと紫外線をおもに放射し、低温の場合は赤外線を放射する。恒星には青白いものや赤みがかったものが見られるが、これは光球の温度の違いによる。
[日江井榮二郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…対流層は太陽表面近くまで広がるが,最後の,深さ数百kmより上層の大気ではエネルギーは再び放射の形で流出する。
[光球]
太陽はガス体であるのではっきりした表面をもっているわけではない。可視光で見える大気の部分を光球と呼ぶ。…
※「光球」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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