がんにまつわる問題を扱う精神医学の一分野。サイコロジーpsychology(心理学)とオンコロジーoncology(腫瘍(しゅよう)学)を組み合わせた語で、「精神腫瘍学」と訳される。欧米で患者に対するがんの告知が一般的になった1970年代におこり、1980年代に確立された比較的新しい学問である。
がんが患者やその家族の精神面に与える影響と、精神的・心理的因子ががんの発症や治癒過程などに与える影響を検討し、がん患者や家族の心理・社会・行動的側面など幅広い領域での研究、臨床実践、教育を行う。また、患者や家族のみならず、がん医療や患者、家族のケアに従事する医療スタッフの精神面の問題も扱う。
日本では、1986年(昭和61)に日本臨床精神腫瘍学会(現、日本サイコオンコロジー学会)が設立され、1992年(平成4)には全国のがん専門病院に先駆けて、国立がんセンター(現、国立がん研究センター)に精神腫瘍科が開設された。
サイコオンコロジーの臨床実践に取り組む専門家をサイコオンコロジストといい、日本サイコオンコロジー学会によるとその役割は、(1)疾病や治療に関する適切な情報を提供すること、(2)けっして孤立しないように情緒的に支えること、(3)治療を続けるうえで患者を悩ます不眠や不安、気分の落ち込みに対して、精神医学的な治療を含めたサポートを用意し、最善の治療を受けられるように医学的なサポートを提供すること、とされている。
[渡邊清高 2017年11月17日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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