翻訳|saccharin
合成甘味料として知られている化合物で、1879年にアメリカのレムセンとファールベルクにより初めて合成され、サッカロース(ショ糖)に似せて命名された。工業的にはo(オルト)-トルエンスルホンアミドを過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を用いて酸化する方法により製造されている。真空中で昇華する白色の結晶。わずかに苦味があるが、ショ糖のおよそ500倍の甘味をもつので、ダイエット食品などの甘味料として使われている。エタノール(エチルアルコール)には溶けるが水には溶けにくいので、水に溶けやすいナトリウム塩(C7H4NO3SNa・2H2O)を甘味料として用いている。1960年代には動物実験の結果から発癌(はつがん)性の疑いがもたれ、アメリカでは1977年に一度は使用禁止になった。しかし、その後の実験からは発癌性の証拠が得られず、1991年には発癌性化合物のリストから外された。現在では、アメリカ、中国など多くの国で使用が認められて大量に使われている。しかし、日本では食品衛生法によりサッカリンの最大使用量が定められているので、アスパルテームなど他の合成甘味料が多く使われている。
[廣田 穰]
サッカリン
分子式 C7H5NO3S
分子量 183.2
融点 229℃
沸点 減圧下で昇華
合成甘味料の一種で,安息香酸スルファミドとも呼ばれる。ショ糖の約500倍の甘みをもつ。トルエンを原料として化学的に合成される。合成甘味料として最初に商品化されたもので,砂糖saccharoseに似せてサッカリンと名付けられた。短期あるいは中期毒性はないが,動物実験で腎臓に癌を発生する疑いがもたれ,いずれは使用禁止になるものと思われる。しかし,これに代わる良いものがないので,糖の摂取を制限される糖尿病食や,糖を多量に用いると良い製品ができない漬物をはじめ,数種の食品に使用量を制限して使用が認められている。ただし,チューインガム以外の食品にはナトリウム塩として用いることが決められている。水溶性が増すためで,ナトリウム塩を溶性サッカリンともいう。食品を食べた後の後味に苦みが残るのが欠点で,そのために他の甘味料と併用して用いる。
→合成甘味料
執筆者:田島 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1,2-benzisothiazol-3(2H)-one.C7H5NO3S(183.19).人工甘味料の一つ.o-トルエンスルホンアミドを酸化し,還元すると得られる.白色の結晶.融点226~230 ℃.0.828.エタノールなどに可溶,水に難溶であるが,N-ナトリウム塩は水溶性である.水溶液はショ糖の約500倍の甘さがある.糖尿病患者や肥満者用のノンカロリー甘味料として広く利用されている.[CAS 81-07-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…化学構造と甘味との関係は古くから研究されているが,アルデヒド基-CHO,オキシム基-CH=NOH,ハロゲン基,アミノ基-NH2,スルホ基-SO3H,トリアジン核,スルホアミノ基-SO2NH2,水酸基-OHをもった化合物がおおむね甘味が強い。しかし,現在までに開発された合成甘味料はサッカリン,ズルチン,チクロ(サイクラミン酸ナトリウム),アスパルテームなど数少ない。さらに,ズルチンとチクロはその安全性に疑いが生じ,それぞれ1968年,69年に日本では使用が禁止されている。…
…たとえば西アフリカ原産マランタ科の植物Thaumatococcus danielliとDioscoreophyllum cumminsiiからそれぞれ取り出されたタウマチン(分子量約2万)とモネリン(分子量約1万)も甘味を呈する。このほかサッカリン,ズルチン,サイクラミン酸などの人工甘味料がある。人工甘味料をハエは全く甘く感じないが,ラットではサッカリンは甘く感じ,ニホンザルなどではすべての人工甘味料を甘く感じる。…
※「サッカリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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