翻訳|cystine
システインの2分子が酸化されて結合した含硫アミノ酸の一種。立体構造上、互いに対称的なD形とL形があるが、タンパク質中にみいだされるものは、すべてL形である。正六角板状晶で、光学活性をもつ。水に溶けにくく、弱酸や弱アルカリには溶ける。タンパク質構成アミノ酸の一種で、とくに毛髪、爪(つめ)、角(つの)などのケラチンには多量含まれており、酸加水分解液から直接沈殿として分離できる。シスチン尿症(遺伝病)患者の尿中にはシスチンの結晶が含まれる。種々の還元試薬により容易に還元されてシステインとなる性質は、生体内酸化還元の過程で重要な役割を果たしている。高等植物や酵母には、還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NADH)によるシスチンのシステインへの還元系が存在する。ジスルフィド結合(S‐S結合)によってタンパク質のポリペプチド鎖を折り畳んだり連結させて高次構造を保持し、酵素あるいはホルモンの活性にもシスチンが関与していることが多い。
[景山 眞・入江伸吉]
シスチンは必須(ひっす)アミノ酸であるメチオニンの作用をシステインを経て一部代替できるので、栄養上はメチオニン+シスチン量が問題とされる。すなわち、シスチンは広く食品タンパク質に含まれているが、食品やアミノ酸製剤などの栄養効果をアミノ酸組成から検討する場合には、含硫アミノ酸としてメチオニンと同等に扱われている。
[宮崎基嘉]
dicysteine.C6H12N2O4S2(240.30).含硫α-アミノ酸の一つ.タンパク質構成アミノ酸として,また遊離の形で生物界に広く分布している.ペプチド鎖を架橋して特有の立体構造を保つうえで役立ち,還元されてL-システインとなり生理的に重要な役割を果たしている.毛髪の加水分解液から等電点で析出させて分離する.天然のR(L)形は六方晶系,小板状結晶.融点260~261 ℃(分解).-223.4°(1.0 mol L-1 塩酸).pKa1 1.65,pKa2 2.20,pKa3 7.85,pKa4 9.85.栄養的には必須アミノ酸ではないが,医薬品,化粧品として用いられる.[CAS 56-89-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…また,可鍛性のある白金を得る精製法を確立し,光学機器の十字線などに用いられるごく細い白金線(ウォラストン線)を作った。精度の高い反射式ゴニオメーター(測角器)を作り結晶学に貢献,さらに,方解石の直角プリズムを2個はり合わせた偏光プリズム(ウォラストンプリズム)や,2枚のレンズをはり合わせて収差を除いたウォラストンレンズなど数多くの光学機器の改良や発明があり,このほかにも太陽スペクトルの黒線を観測したり,アミノ酸の一種であるシスチンを発見するなど,彼の業績は広範囲にわたっている。【川合 葉子】。…
※「シスチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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