シャルル

精選版 日本国語大辞典 「シャルル」の意味・読み・例文・類語

シャルル

(Charles) フランス王の名。
[一] (三世) カロリング朝の王(在位八九八‐九二三)。ルイ二世の子。バイキングの首領ロロにノルマンディー領地を贈って、ノルマン人の侵略をまぬかれたが、のちに王位をパリ伯ロベールに奪われ、幽閉された。単純王。(八七九‐九二九
[二] (四世) カペー朝最後の王(在位一三二二‐二八)。フィリップ四世の子。財政の建直し、王権伸張につとめた。端麗王。(一二九四‐一三二八
[三] (五世) バロア朝の王(在位一三六四‐八〇)。ジャン二世の子。百年戦争中、名将デュ=ゲクランを登用し、イギリス軍に反撃を加え、カレー、ボルドー以外の被占領地を奪還。また、学芸を愛し、ルーブル城に多くの貴重本を集めた。賢王。(一三三七‐八〇
[四] (六世) バロア朝の王(在位一三八〇‐一四二二)。シャルル五世の子。ブルターニュ遠征の途次発狂。その後、国内は乱れ、イギリス軍とアザンクールで戦って敗れ国土の大半を失った。親愛王。(一三六八‐一四二二
[五] (七世) バロア朝の王(在位一四二二‐六一)。シャルル六世の子。ジャンヌ=ダルクのオルレアン解放後、それまでほぼフランス全土を支配していたイギリス軍を後退させ、ランスで戴冠。のち一四五三年、カレーを除く全フランスからもイギリス軍を撃退、百年戦争を終結させた。また、ガリカニズム(ガリカン教会主義)を認めるなど、王権の強化に努力。勝利王。(一四〇三‐六一
[六] (八世) バロア朝の王(在位一四八三‐九八)。ルイ一一世の子。ブルターニュ公女アンヌと結婚、王領を拡大した。騎士道物語を愛し、十字軍の征旅にならいナポリに遠征、占領したがドイツ皇帝の妨害にあい撤兵した。(一四七〇‐九八
[七] (九世) バロア朝の王(在位一五六〇‐七四)。アンリ二世の子。母后カトリーヌ=ド=メディシスが摂政となり一〇歳で王位につく。王即位と同時に新旧両教徒の対立が激化、宗教内乱となった。一五七二年、母后カトリーヌはサン‐バルテルミーの新教徒虐殺を決行。王はそれを苦に病死したといわれる。(一五五〇‐七四
[八] (一〇世) ブルボン朝の王(在位一八二四‐三〇)。ルイ一六世、ルイ一八世の弟。一七八九年大革命時に亡命。ナポレオン没落後帰国し、旧制度への復帰を唱え、反動的運動を指導した。即位後には言論抑圧、土地所有者への保護関税政策などを打ちだしたが、一八三〇年七月革命が起きると直ちに退位。イギリスへ亡命した。(一七五七‐一八三六

シャルル

(Jacques Alexandre César Charles ジャック=アレクサンドル=セザール━) フランスの物理学者。一七八三年水素気球を考案、みずから乗って約二時間の飛行に成功。また、「シャルルの法則」を発見、気体研究に貢献した。科学アカデミー会員。(一七四六‐一八二三

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デジタル大辞泉 「シャルル」の意味・読み・例文・類語

シャルル(Charles)

フランス王。
(5世)[1337~1380]在位1364~1380。名将デュ=ゲクランを起用してイギリス軍と戦い、被占領地の大半を奪回。財政を再建して王国の集権化に努め、また学芸を奨励した。賢明王。
(7世)[1403~1461]在位1422~1461。国土の大部分をイギリスに占領されたが、ジャンヌ=ダルクオルレアン救出から攻勢に転じ、カレーを除く全国土を回復して百年戦争を終結させた。勝利王。
(9世)[1550~1574]在位1560~1574。アンリ2世の子。10歳で即位。宗教の内乱が続き、母カトリーヌの指導によるサンバルテルミーの虐殺に同意。その自責により死を早めた。
(10世)[1757~1836]在位1824~1830。ルイ16世・18世の弟。フランス革命で英国に亡命。ナポレオン没落後に帰国。即位後は反動的諸政策を行ったが、1830年の七月革命で退位、イタリアで没。

シャルル(Jacques Alexandre César Charles)

[1746~1823]フランスの物理学者。水素気球を考案し、自らこれを操縦。1787年に気体についての「シャルルの法則」を発見。

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改訂新版 世界大百科事典 「シャルル」の意味・わかりやすい解説

シャルル
Charles
生没年:1433-77

バロア家系ブルゴーニュ公家第4代当主。あだ名はル・テメレールle Téméraire(〈向こう見ず〉の意)。父フィリップ公の晩年,フランス王家との関係はしだいに悪化した。1461年ルイ11世の登極が転回点となり,当時シャロレー伯であったシャルルは公家家政の実権者として頭角を現し,反王家路線を打ち出す。67年家督相続の後,72年の内戦に挫折してからは,フランスの内政への関心を捨て,フランスとドイツの間に独立国を建てる方向に決定的に動く。アルザス,ロレーヌ,フリースラントと支配地を広げたところで,ドイツ皇帝に対し王号を要求した。ルイ11世はこれを阻止しようと権謀術数の限りをつくしてシャルル包囲網をつくる。孤立したシャルルは,77年,ロレーヌ公のスイス人傭兵隊とナンシーで戦い敗死した。ここに公家家督を相続した遺児マリアは,フランドル,ネーデルラント諸邦の支持の下に,オーストリア・ハプスブルク家のマクシミリアンと結婚し,公家の北方領国を保全した。
ブルゴーニュ公国
執筆者:

シャルル
Jacques Alexandre César Charles
生没年:1746-1823

フランスの物理学者。パリ工芸技術学校の実験物理学教授。正規の科学教育を受けなかったが,B.フランクリンの電気に関する研究に刺激を受けて科学の道に進んだ。ロベール兄弟(A.J. ロベール,M.N. ロベール)と協力して水素気球を製作,1783年12月1日にはA.J.ロベールとともに乗り組んで,約2時間の飛行実験に成功した。この飛行はモンゴルフィエの熱気球に10日の遅れをとったが,シャルルの気球はゴム引絹布を用い,通気筒,ガス弁,砂袋,いかりなどの制御装置を備えた実用的なもので,高度3000mに達した。気球による飛行はパリ市民の注目を集め,のちに軍事偵察や大気の研究に利用された。87年には,圧力一定のとき気体はその種類によらず温度に比例して膨張すること(シャルルの法則)を発見,これはのちにゲイ・リュサックの精密な実験によって確定された。彼は重要な著作をほとんど残さなかったが,雄弁な講演と優れた演示実験によって人々の好評を博し,95年,アカデミー・デ・シアンス会員に選ばれた。
執筆者:

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化学辞典 第2版 「シャルル」の解説

シャルル
シャルル
Charles, Jacques Alexandre César

フランスの実験物理学者.パリで1781年からはじめた実験物理学の講演と演示が評判となり,名を知られるようになった.1795年科学アカデミー会員に選ばれ,工芸学校(Conservatoire des Arts et Métiers)の教授も務めた.1783年にMontgolfier兄弟による熱気球飛行が行われた後,水素を詰めた軽気球を製作し,同年末,自ら飛行した.かれの名は,気体膨脹のシャルルの法則で知られているが,これは,J.L. Gay-Lussac(ゲイ-リュサック)が1802年に発表した論文のなかで,Charlesが1787年ころ,すでに同じ実験を行っていたことに言及したからである.のちにスコットランド人物理学者P.G. Taitがシャルルの法則とよび,この名称が英米圏で誤って定着してしまった.しかし,かれは結果を印刷して発表することをしなかったし,また当時知られていた気体のいくつかには成り立たないとしていた.

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百科事典マイペディア 「シャルル」の意味・わかりやすい解説

シャルル

フランスの物理学者。気体の物理的性質を研究,1783年水素気球を作り,自ら飛行。1787年定圧下での気体体積の温度変化に関するシャルルの法則を発見。ほかにフランクリンの電気に関する研究をフランスに紹介したり,各種実験器具の発明や改良も行った。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャルル」の意味・わかりやすい解説

シャルル
Charles, Jacques-Alexandre-César

[生]1746.11.12. ロアレ,ボージャンシー
[没]1823.4.7. パリ
フランスの物理学者。パリの工芸院教授。 1795年パリの科学アカデミー会員に選ばれ,1816年からはアカデミーの実験物理学部門総裁となった。 1783年,熱い空気の代りに水素を詰めた気球を製作してみずから乗込み,1.6km上昇した。気体の物理的性質を研究し,87年シャルルの法則を見出した。

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世界大百科事典(旧版)内のシャルルの言及

【ブルゴーニュ公国】より

…ルクセンブルク,リンブルク両公領も彼の代に公家の統制下に入った。さらに最後の当主シャルル(豪胆公)は,その10年間の短い当主期間に,ブルゴーニュ,ブルグントに隣接するエルザス(アルザス),ロートリンゲン(ロレーヌ)の領有をねらい,一時はそれを実現し,また上シュワーベン(スイス)にも食指を動かした。北の方では,ホラントの東,ライン川下流域のヘルレ公領もまた,彼の代に公家支配地となった。…

【航空】より

…しかし彼らは情熱をこめて国王を説得し,そのおかげで人類の航空史の第1ページを汚さずにすんだ。その10日ほど後に,フランスの物理学者J.A.C.シャルルのより実用的な水素ガス入り気球が飛行に成功した。気球は空気より軽いガスを詰めた袋の静浮力を利用するものであるから,原理的にはきわめて簡単で,たちまち世界各国に普及した。…

※「シャルル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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