日本大百科全書(ニッポニカ) 「シーグバーン」の意味・わかりやすい解説
シーグバーン(Kai Manne Börji Siegbahn)
しーぐばーん
Kai Manne Börji Siegbahn
(1918―2007)
スウェーデンの物理学者。ルンドに生まれる。ウプサラ大学で物理学、数学、化学を学び1942年に卒業、ストックホルム大学に進み、1944年理学博士号を取得した。ノーベル物理学研究所を経て、1951年ストックホルムの王立工科大学の物理学教授に就任、1954年にウプサラ大学の物理学部門の主任教授となり、1984年まで務めた。その間に国際度量衡委員会委員、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)会長を務めている。
シーグバーンの研究は、原子物理学、核物理学、プラズマ、電子光学など広範囲に及んでいるが、もっとも有名なのは電子分光法による化学分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)の開発である。ESCAは、試料にX線を照射したのちに、試料から放出される電子のスペクトルを精密に測定することによって、その試料に含まれる分子の化学結合の状態を知ることができる技術で、有効な化学分析法として幅広く利用されている。1981年「高分解能電子分光学の発展への貢献」に対して、シーグバーンにノーベル物理学賞が与えられた。レーザー分光学の発展への貢献が認められたアメリカの物理学者ブルームバーゲン、ショウロウとの同時受賞であった。また、父のカールKarl M. G. Siegbahnも1924年にX線分光学の研究によりノーベル物理学賞を受賞しており、親子二代の受賞であった。
[編集部]
シーグバーン(Karl Manne Georg Siegbahn)
しーぐばーん
Karl Manne Georg Siegbahn
(1886―1978)
スウェーデンの物理学者。エレブロに生まれる。ルンド大学でリュードベリの助手をつとめ、1911年に論文「磁場の測定」により博士号を取得。リュードベリの死後、1920年に教授に任命された。のちウプサラ大学教授(1923)、1937年スウェーデン王立科学アカデミーがストックホルムに創設したノーベル物理学研究所の初代所長に就任。同年ストックホルム大学物理学教授。国際度量衡委員会の委員、物理学の国際連合会長も務めた。
1921年に真空分光器を考案するなどX線分光学の実験的基礎を築き、結晶の格子定数の測定、X線スペクトルのM系列の発見を行い、1924年のノーベル物理学賞を翌1925年に受賞。晩年は核物理学の研究に進んだ。
[高橋智子]