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ジャリ Jarry, Alfred

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ジャリ
Jarry, Alfred

[生]1873.9.8. マイエンヌ,ラバル
[没]1907.11.1. パリ
フランスの劇作家,詩人。成績優秀で早熟な才能を示し,1888年リセ・レンヌ在学中に,代表作である風刺劇『ユビュ王』 Ubu roiを書いた。 90年エコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) 入試準備のためパリに出たが,すぐ文学界に交わり詩集,戯曲を発表。 96年パリで上演された『ユビュ王』は,ブルジョア社会を痛烈に批判し,スキャンダルを巻起した。以後彼は主人公ユビュのように,人間批判,社会批判を実践し,奇行と不規則な生活を続け,アルコール依存症と貧窮のはてに慈善病院で死んだ。従来の文学概念を破壊する革命的新しさにより,シュルレアリストたちに高く評価される。詩文集『砂時計覚え書』 Les Minutes de sable mémorial (1894) ,『昼と夜』 Les Jours et les nuits (97) ,戯曲『アンチクリスト,セザール』 César Antéchrist (95) ,『鎖につながれたユビュ』 Ubu enchaîné (1900) ,小説『メッサリーヌ』 Messaline (02) ,文学論『空理学者フォストロル博士の行状と意見』 Gestes et opinions du docteur Faustroll,paraphysicien (1897~98執筆,1911刊) 。

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百科事典マイペディアの解説

ジャリ

フランスの詩人,劇作家。象徴主義の影響のもと,散文詩集《記念すべき砂の時間》を出す。ブルジョアを痛烈に風刺した戯曲《ユビュ王》(1896年)で一躍有名になった。

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世界大百科事典 第2版の解説

ジャリ【Alfred Jarry】

1873‐1907
フランスの劇作家,小説家。ブルターニュで育ち,12歳から詩作を試み,高校の教師ユベールをモデルに人形劇を書く。1891年パリへ出て象徴主義に加わり,演出家リュニェ・ポーの秘書となって旧作の人形劇を書きかえた《ユビュ王》を96年に上演させる。幕あきの第一声〈糞たれ!〉は怒号と嘲笑で迎えられるが,悪徳の塊のユビュ親父は既成の道徳や美意識を破壊する新しい人間像として,後にダダやシュルレアリストに高く評価される。

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大辞林 第三版の解説

ジャリ【Alfred Jarry】

1873~1907) フランスの劇作家・詩人。アンチ-テアトルの先駆作品ともいうべき戯曲「ユビュ王」で知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ジャリ
じゃり
Alfred Jarry
(1873―1907)

フランスの劇作家、詩人。象徴主義(サンボリスム)、とくにマラルメの影響を強く受け、詩集『砂時計覚え書』(1894)で文壇にデビュー。これはまた早くもロートレアモンの美学を受け継いだ作品を含み、シュルレアリスムにつながる。1896年象徴主義演劇の旗頭であったリュニェ・ポーの制作座で戯曲『ユビュ王』を発表。人間の愚かしさと卑しさ、不条理な暴力を体現し、破壊的な笑いを誘う主人公ユビュは、スキャンダルを巻き起こす。以後実生活でもユビュと化して生きたジャリは、生きることが作品となるような一つの文学的典型となった。『ユビュ王』は今日、不条理演劇の源流とみなされ、拳銃(けんじゅう)と自転車とアブサン酒に明け暮れ、ブルジョア的平穏に挑戦したジャリは先駆的シュルレアリストとされるに至った。『フォーストロール博士の言行録』(1911、死後刊)で定義された「パタフィジック」は例外を研究し、想像力による解決を求め、相反するものの同一を唱えて、シュルレアリスムの精神を一語に要約している。
 作品はほかに自伝的小説『日々と夜々』(1897)、詩的小説『絶対の愛』(1899)、並はずれた存在を主人公とする対の小説『メッサリーナ』(1901)と『超男性』(1902)、ユビュ連作の『鎖につながれたユビュ』(1900)などがある。絵画をみる目に優れ、アンリ・ルソーの画才をみいだした。アルコール中毒と貧窮のなかに、34歳で病死した。[大崎明子]
『渋澤龍彦訳『超男性』(1975・白水社) ▽J・H・レヴェスク著、宮川明子訳『アルフレッド・ジャリ』(1969・思潮社)』

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世界大百科事典内のジャリの言及

【象徴主義】より

…しかし,それはヨーロッパ演劇における最初の〈解体の演劇〉であり,マラルメの問題意識の射程の長さは,現代の演劇についてのラディカルな問いを予告していた。またこの土壌が生んだクローデルの劇作は,当時上演されなかったものの,象徴主義演劇の潜在的可能性を豊饒な演劇的宇宙につなげていたし,リュニェ・ポーが初演してスキャンダルを巻き起こしたジャリの《ユビュ王Ubu roi》は,一方でイェーツのアイルランド土着神話への回帰と,他方で20世紀初頭のダダとシュルレアリスムの先駆をなすものであった。のちのコポーのビュー・コロンビエ座の運動もマラルメを指標としたし,アルトーさえ,ある意味では象徴派の開いた地平で思考している。…

【前衛劇】より

…いわば,その後60年代から70年代前半にかけての世界的規模での前衛劇運動の高まりの原動力となったものであり,また狭義にはこの一連の動きのみをいわゆる〈前衛劇〉と考える人も少なからずいるという点で,いずれにせよこれらの新しい演劇は,20世紀演劇における前衛精神を考える上では,とりわけ大きな意味をもつということができるだろう。
[不条理劇の出現とその世界的な影響]
 〈不条理劇〉あるいは〈アンチ・テアトル〉の源泉は,世紀末のA.ジャリ作《ユビュ王Ubu Roi》の上演(1896)にさかのぼるというのが定説となっている。ポーランドという場所の指定がありながらも,かつ〈世界のどこの場所でもなく〉,開幕早々〈糞ったれ!〉という挑発的文句で観客を驚倒させたこの舞台は,のちのシュルレアリスト(シュルレアリスム)たちの演劇の指針となった。…

【道化】より

…白塗り白衣装のこの〈月に憑(つ)かれたピエロ〉の姿の中に,当時の詩人,画家,作曲家たちはブルジョア社会において疎外された芸術家の自画像を読みとった。しかし,A.ジャリの《ユビュ王》(1896)が青ざめたピエロとは逆の,荒々しいパンチ(棍棒で女房ジュディを殴りつける)風の道化を提示したのを前触れとして,20世紀初頭には,コメディア・デラルテの道化たちがにぎやかに復活した。すなわち,メイエルホリドの演劇,ストラビンスキーとロシア・バレエ団(バレエ・リュッス),ピカソやルオーの絵画などである。…

【糞】より

…糞や排便行為を笑いに盛りこんだのはほかにも少なくなく,中世ドイツ民話ティル・オイレンシュピーゲルにも散見され,ラブレーの《ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語》の《第一之書ガルガンチュア》第13章は排便後のしりを何で拭くかの長々しい話で埋まっている。近くはスキャンダルを巻き起こしたジャリの《ユビュ王》(1896上演)があり,〈くそったれ!〉で始まって造語を縦横に駆使しながら,性と排泄に絡む人間共通の自然を笑いの中に提示した。続編《丘の上のユビュ》では〈くそ〉の大合唱が入る猥雑(わいざつ)さである。…

【リュニェ・ポー】より

…1893年にM.メーテルリンク《ペレアスとメリザンド》を初演出するとともに,芸術座を制作座に改名して引き継ぎ,その指導者となった。H.イプセン,B.ビョルンソン,A.ストリンドベリ,G.ハウプトマン,G.ダヌンツィオなどの作品を演出したが,彼の名が演劇史上に残るのは,96年,のちの前衛劇の祖型ともされるA.ジャリ《ユビュ王》の初演によってである。またこのころ,O.ワイルドの《サロメ》もプロデュースしている。…

※「ジャリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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