ジュンサイ(読み)じゅんさい

改訂新版 世界大百科事典 「ジュンサイ」の意味・わかりやすい解説

ジュンサイ (蓴菜)
water-shield
Brasenia schreberi Gmel.

池や沼に生育するスイレン科の多年生水草で,茎や葉柄,新芽などは粘質物に覆われる。根茎は細く,泥の中をはい,節から水中茎を分出する。葉は互生して長い葉柄をもち,葉身は広楕円形で,楯状に葉柄につき水面に浮かぶ。花は夏に水面上に咲き,紫色を帯びる。萼片,花弁ともに3枚。おしべは12~36本,めしべは4~18本で離生し,細長く宿存する柱頭をもち,中に各2個の胚珠をつける。果実は袋果で裂開しない。アジア,アメリカ,オーストラリアアフリカなどの温帯域に広く分布する。
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古名を〈ぬなわ(沼縄)〉と呼び,《古事記》《万葉集》以下の諸書にその名が見える。春から夏にかけてがしゅん(旬)で,おもに椀だねや酢の物にするが,江戸時代の料理書には,よく洗ったものに白砂糖をかけたり,砂糖漬にする食べ方も書かれている。生のものはゆでて水にとり,あくを抜いて使うが,変質しやすいので,あく抜きをすませた瓶詰物を使うことも多い。成分の98%が水分で,独特の口当りと香りを楽しむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュンサイ」の意味・わかりやすい解説

ジュンサイ
じゅんさい / 蓴菜
[学] Brasenia schreberi J.F.Gmel.

スイレン科(APG分類:ジュンサイ科。ハゴロモモ科ともいう)の多年草。ヌナワ(沼縄、蓴とも書く)ともいう。日本各地の沼や池に自生するが、水底枯れ葉などが堆積(たいせき)して有機物のたまった酸性水質の場所を好む。地下茎は泥中をはい、ところどころから水中に分枝する茎を伸ばし、葉を互生する。葉は水面に浮かび、楕円(だえん)形で長さ5~10センチメートル、幅4~6センチメートル、表面はつやのある緑色で、裏面は褐紫色。夏、葉の付けねから花柄を伸ばし、先に直径2センチメートルほどの花をつける。花は水面で開き、花被片(かひへん)は6枚で暗紅紫色。花や葉の若芽は寒天状の粘質物に包まれていて、これを摘んで食用とする。若芽を摘むとまた新しい若芽が出るので、晩春から秋口まで次々と収穫できる。昔は京都が本場とされたが、最近では水が汚れたり、沼が埋め立てられたりして、野生のものは激減した。現在では、水田や池に栽培されており、東北地方が産地となった。煮沸してあく抜きしたものが瓶詰にして市販されている。

[星川清親 2018年6月19日]

食品

寒天質に包まれた若芽は軽く湯がいて水にとり、酢の物や和(あ)え物、汁の実とする。味や香りは淡いが、寒天質の滑らかな舌ざわりが好まれる。湯がいたものを瓶詰にしたり、塩漬けにして保存する。市販されている瓶詰のものは湯がいてあるので、そのまま利用できる。98%が水分で、栄養価はほとんどない。古くから食用とされていたと考えられ、『万葉集』にも「ぬなは」の名がみられる。

[星川清親 2018年6月19日]


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食の医学館 「ジュンサイ」の解説

ジュンサイ

《栄養と働き&調理のポイント》


 スイレン科の多年草で、水温の一定したきれいな池沼に生えています。平安時代初期には自生種を食べていたといわれ、現在は食用にはされていませんが、京都の深泥池(みどろがいけ)のものがよく知られています。
 初夏から夏にかけて水中で約5cmになった若い葉茎を摘んで食用にします。全体がガラクトースやマンノースなどを主体とする多糖類(たとうるい)の混合物である透明なゼリー状の粘膜(ねんまく)に覆われているのが特徴で、形が小さく粘りが多いほど良質です。
 さっと湯どおしをしてすぐに冷水にさらし、水気を切ってから、酢のものや和えもの、汁ものに使います。
○漢方的な働き
 ジュンサイは中国では胃潰瘍(いかいよう)や十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)、胃腸病の病後によいとされ、そうした薬効を期待して、スープとして飲むのがおすすめです。

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百科事典マイペディア 「ジュンサイ」の意味・わかりやすい解説

ジュンサイ

日本全土,アジア,オーストラリア,北米,アフリカに分布するスイレン科の多年生水草。池や沼にはえ,若い茎や葉は寒天のような粘質物に包まれる。楕円形の葉は楯(たて)状で水面に浮かぶ。花は5〜7月に咲き,径約2cm,紫褐色。萼片(がくへん),花弁ともに3枚で同じ長さ。おしべは12〜18本ある。若い茎葉を三杯酢,椀だねなどとして食用とする。
→関連項目山本[町]

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栄養・生化学辞典 「ジュンサイ」の解説

ジュンサイ

 [Brasenia schreberi].スイレン目スイレン科ジュンサイ属の宿根多年草.成長部の茎葉を食用にする.

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