スペイン中央部,カスティリャ地方の同名県の県都。人口5万4568(1982)。エレスマEresma川とクラモレスClamores川に挟まれた町で,両河川の合流地点にはカトリック両王が一時居を構えたアルカサル(王宮。14世紀)がそびえ,王宮から旧市街へは城壁が延びている。8世紀初めにイスラム教徒に征服されたが,11世紀にキリスト教徒が奪回し,メスタ(羊毛生産業者の組織)を中心とした羊毛産業と牧畜による経済発展を基盤に,カスティリャ王国の中で軍事的に最も強力な都市であった。マドリードをイスラム教徒から解放したのは,セゴビア人である(1083)。だがコムネロスの反乱(1519-21)では,異国人の国王カルロス1世に対抗して敗れ,さらに16世紀から17世紀にかけ,外国遠征ならびに経済危機,疫病などによるカスティリャ王国の衰退とともに,かつての力を失っていった。こうした歴史から,1978年憲法発布後に地方自治制度が確立されていく過程で,独自の自治権を要求したが承認されず,カスティリャ・レオン地方の中に組み入れられた。
執筆者:フアン・ソペーニャ
セゴビアは前80年ごろローマ人の支配下に入る。ローマ時代の水道橋は,花コウ岩の切石を積み上げた128個の2層アーチからなり,全長813mに及ぶ。中世の遺構では,サン・ミリャン教会(11~12世紀),十二角形のラ・ベラ・クルス教会(13世紀)などロマネスク建築がある。カルロス1世の命により16世紀に建立された大聖堂は,スペイン・ゴシック最晩期の建築で,典雅なたたずまいを見せる。設計はヒル・デ・オンタニョンJuan Gil de Hontañón(1480ころ-1526),星形リブ付き穹窿で覆われた祭室群はその子ロドリゴRodrigoによる。回廊は,コムネロスの反乱時に破壊をうけた旧大聖堂から移築された15世紀のもの。
執筆者:五十嵐 ミドリ
スペインが生んだ20世紀最高のクラシック・ギター奏者。ギターが演奏会用の独奏楽器として確立されたのは,セゴビアの力によるところがきわめて大きい。少年時代にギターに魅せられ,家族の反対を押し切って独習で奏法を習得,15歳でデビューした。その後,スペインおよび南米各地で演奏を重ねて腕を磨き,1924年パリに進出。ここで大成功をおさめ,世界的演奏家としての地歩を固めた。ギターの限られたレパートリーを拡充するため,セゴビアは著名な作曲家たちに新作を委嘱する一方,バッハ,その他の大家たちの作品をみずからギター用に編曲しているが,これは,彼の後に続くギター奏者たちの大きな財産となった。1929,59,80,82年に来日。表情豊かに,ロマンティックに歌いあげてみせるセゴビアの演奏は,現代の感覚からは多少古く感じられるとはいえ,それがかもし出す人間的なぬくもりは,依然,強く支持されている。
執筆者:岩井 宏之
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