日本大百科全書(ニッポニカ) 「セリグマン」の意味・わかりやすい解説
セリグマン(Edwin Robert Anderson Seligman)
せりぐまん
Edwin Robert Anderson Seligman
(1861―1939)
アメリカの財政学者、経済学者。ニューヨーク市に生まれる。同市のコロンビア大学に学び、1879年に卒業してヨーロッパに留学し、1882年帰国。1885年に母校コロンビア大学の講師となり、助教授を経て1891年経済学および財政学担当の教授、のちマックビカー記念講座の教授McVickar Professor of Political Economy and Financeになった。1931年定年退職して名誉教授となり、1839年6月、ニューヨーク州のパレイシッド湖畔で没した。
彼は大学教授としてのみならず、同志の学者などと協力して1885年にアメリカ経済学会を創設し、一時期その会長となり、また『社会科学全書』Encyclopedia of the Social Science全15巻(1930~1935)の編集長および『ポリティカル・サイエンス・クォータリー』Political Science Quarterlyの編集者などとして活躍し、学界に貢献するところ大であった。
彼の学問的関心は理論経済学、財政学、学説史、社会思想などきわめて広範にわたっているが、とくに財政学、なかでも租税論に強い興味をもち、多数の優れた著書および論文を発表し、第二次世界大戦前の世界財政学界の指導者の一人であった。その代表的著書『租税転嫁論』The Shifting and Incidence of Taxation(初版1892、第5版1927)は租税負担の転嫁に関する古典的名著として知られている(本書の最終改訂版たる第5版の完訳本として、井手文雄訳『租税転嫁論』全2巻・1950、1951・実業之日本社がある)。
[井手文雄 2018年8月21日]
セリグマン(Kurt Seligman)
せりぐまん
Kurt Seligmann
(1900―1962)
スイス出身で、アメリカに移住したシュルレアリスムの画家。スイスのバーゼルに生まれる。ジュネーブ、フィレンツェで美術教育を受けたのち、1932年に最初の個展を開く。初期には抽象的作風だったが、ミロとアルプの影響からシュルレアリスムの色彩を強め、特異な幻想絵画を発展させた。1939年にはヨーロッパの戦火を避けてアメリカに移住し、謎(なぞ)めいた薄明のなかに渦巻き流動する帯状の布に覆われた人物を好んで描いた。中世の芸術にひかれるゴシック的想像力の持ち主で、美術評論の著作も多く、その絵画は魔術的リアリズムによる別世界の雰囲気に満たされている。
[石崎浩一郎]
『セリグマン著、平田寛訳『世界教養全集20 魔法――その歴史と正体』(1961・平凡社)』